グロスアップとはどんな仕組みなのか
グロスアップとは、駐在員など海外勤務者において、会社が個人の税金・社会保険料を負担(または補填)する場合に、その補填部分をあらかじめ給与総額(グロス給与)に乗せて計算し、「手取り額(Net salary)を確保」するための逆算的な給与設計方式を指します。例えば、手取りを1,000万円と掲げ、その手取りを実現するために税や保険料を含めた支給総額を逆算するという形です。このグロスアップ計算は年末の最後の給与日前に終わっておかなければならないため、年末調整とも言われています。
どうして駐在員にグロスアップが必要なのか
米国の税制や税率は州によって異なり、税負担の差により手取り額が日本勤務時と比べて大きく変わってしまう恐れがあります。米国にある日系企業は、駐在をきっかけに駐在員の手取り給与が大幅に減ってしまうような状況を避けるため、手取り額を一定に保つ制度を導入しています。この制度を運用するためには、税金や手当をすべて踏まえて総額給与を計算し直す必要があり、そこでグロスアップが活躍します。
グロスアップと W-2 の関係
グロスアップに関連する用語として W-2(米国源泉徴収票)があります。W-2 は、米国で働く人が翌年1月に雇用主から受け取る書類で、その前年に支払われた課税対象給与や源泉徴収税額がまとめられています。
グロスアップで計算された総額給与は、最終的にこの W-2 に反映されます。会社が負担した税金や家賃を含む駐在手当、日本側からの給与(米国では全世界所得が課税対象となるため)なども、課税対象とされる場合は W-2 に含まれます。このため、グロスアップの計算は W-2 の内容に直結し、確定申告にも影響します。もし W-2 に入れるべき情報が漏れてしまうと、翌年の確定申告の際に追加の税金が発生する可能性があります。
一般的なグロスアップ計算の流れ
-
手取り額(Net)の決定
日本勤務時の手取りベースを基準に、駐在中の手取り額を決める。 -
支給対象となる給与項目の把握
日本と米国で支給される給与・手当を整理する。 -
各種税金(所得税・社会保障税)の試算
課税対象所得をもとに連邦税・州税を試算。 -
税金を含めた総額給与(Gross)の算定
手取り確保のために必要な総額給与を試算。 -
会社負担の税金も給与扱いとして加算
グロスアップ税金も課税対象となるため再計算を実施。 - 年末に Final Gross-Up(最終調整)を実施
- 確定した総額給与を W-2 に反映
グロスアップが正しく行われないとどうなるか
グロスアップの計算が不十分だと年末の W-2 に誤りが生じます。例えば、家賃や日本給与など本来所得に含めるべき情報が漏れていた場合、確定申告で追加税金が発生し、利息や罰金が課される可能性があります。また、会社が税金を負担したつもりでも W-2 に反映されていない場合、駐在員の手取りが減ってしまうこともあります。
駐在員が気をつけるべきポイント
グロスアップは会社側で計算しますが、その基礎となる情報は駐在員が提出する資料に依存しています。米国側と日本側の給与明細、会社負担の引越し費用、支給された手当など、どれも重要な情報です。いずれかが欠けると給与計算全体にズレが生じます。また、年末の給与が支払われる前に調整が完了している必要があるため、資料提出はタイムリーに行うことが重要です。
さいごに
グロスアップは、駐在員の手取りを守りつつ税務ルールに沿って給与を調整するための仕組みです。最終的に W-2 に反映されるため、誤りがあると確定申告で追加税金が発生する恐れがあります。必要資料は漏れなく、迅速に提出しましょう。
CDHは、アシュランス(監査)、税務、ビジネスコンサルティング、IT、給与等サービスを通して、全米のお客様をサポートしています。ご質問やご相談がありましたらいつでもお気軽にお問い合わせください。
CDH Japan LinkedIn をフォロー: LinkedInでフォローする
メールでのお問い合わせ: お問い合わせ
本記事に関する注意事項(DISCLAIMER)
本記事の情報を、権利者の許可なく複製・転用することは禁止されています。本記事は法律上または専門的アドバイスを意図したものではなく、一般的な情報提供を目的としています。本情報を利用した結果について、CDH CPA, PLLC および筆者は責任を負いません。具体的な対応については必ず専門家へご相談ください。




