アメリカのCコーポレーションの税務申告書(Form 1120)を作成する際に算出する課税所得は会計上の税引前利益に加算や減算をして計算されます。つまり、会計上と税法上について取り扱いが異なる項目があるため、会計上の利益を調整して課税所得を算出し、この課税所得に税率をかけて税金を計算しています。では会計上と税法上で取り扱いが異なる項目は何なのか、またどのような取引がどのように課税所得に影響を与えるのでしょうか?取り扱いが異なる項目を理解することにより、会計上どの取引を記帳すれば税金を多く支払うことになるのか、どのように損益計算書に影響を与えるのかを理解することができ、経営の意思決定に役立ちます。今回は会計上と税法上で取り扱いが異なる主要項目についてお話させていただきます。

会計上と税法上で取り扱いが異なる項目

会計上と税法上で取り扱いが異なる主要項目は下記になります。

  • 食事と交際費(

会計上では出張中に発生する食事、また交際費は費用で計上します。しかし税法上では食費(取引先との食事、従業員数人との食事、出張中の食事)は50%のみが費用として認められ、交際費(取引先をゴルフやコンサート、また、高価なディナーに連れて行く等)は全額費用として認められません。なお、会社が従業員を招待して行うホリデーパーティーやその他の社内イベントに発生する食事は税法上でもすべて費用として認められます。

 

  • 減価償却費

多くの会社が会計上、固定資産の減価償却を定額法(毎年同額ずつ減価償却費を計上する計算方法)を用いているかと思います。しかし、税法上では加速度償却となっており、加速度償却は、資産の耐用年数の早い時期に減価償却が高くなるように減価償却を計算します。また、税法上では固定資産を購入した年に一括で償却も可能です(ただし一括償却には限度があり、限度額は毎年変わります)。よって会計上と税法上の減価償却に差異が生じ、税法上の減価償却が会計上の減価償却より多い場合、会計上の税引前利益からこの差額を減らして課税所得を計算することになります。

 

  • 貸倒引当金や在庫引当金

会計上、貸倒引当金や在庫引当金を計上すると費用となりますが税法上では費用として認められず、会計上の税引前利益に引当金を加算して課税所得を計算します。そしかし、実際に貸倒引当金や在庫引当金が戻された年(貸倒引当金を引き当てていた売掛金が回収された、また回収が不可能なことが明らかになったため、貸倒引当金と売掛金を減らす処理をした、引当金を計上していた在庫を販売した、あるいは破棄したなど)は税法上で費用として処理することが可能になります。

 

  • 未払費用

会計上、賞与引当金や未払給与、その他経費等に関する未払費用は費用として計上します。しかし、税法上、未払費用は原則費用として認められません。ただし、例外があり、給与関連の未払費用(賞与、有給休暇引当金も含む)の場合、期末日から2.5か月以内に支払いが行われた金額は税法上の費用として認められます。また、給与関連以外の未払費用は期末日から8.5か月以内に支払われた金額は税法上の費用として認められます。

 

  • 統一資本化 (Uniform capitalization)

統一資本化ルールは税法のルールで、不動産や有形動産を生産、また再販売目的で財産を取得する活動(商品の製造や販売を含む)を行い、かつ小規模会社と考えられない場合に適用する必要があります。このルールでは、製造や販売にかかった直接費用及び間接費用を税法上ですべてを資産として計上する必要があり、つまり費用として処理できないことになります。例えば、商品の出荷に関わった従業員の人件費、輸送費は会計上費用として処理しますが、税法上はすべてを費用として処理できません。なお、統一資本化ルールを適用するにあたり、費用として処理できない数字を算出する方法がありますが、今回は計算方法については割愛させていただきます。

では、上記の内容を元にして税引前利益から課税所得を計算する例を示したいと思います。

   費用として認められる金額  
   会計  税法  差異
食費  $                        3,500  $                   1,750  $               1,750
接待費                             2,500                                 –                   2,500
減価償却費                          10,000                     20,000              (10,000)
貸倒引当金                          20,000                                 –                 20,000
賞与引当金*                          50,000                     25,000                 25,000

 

統一資本化ルール:税法上費用として認められない金額は$35,000

*期末日から2.5か月以内に$25,000支払う予定

税引前利益$150,000とし、上記の内容を元に課税所得を計算すると下記のようになります。

税引前利益  $                   150,000
食費                             1,750
接待費                             2,500
減価償却費                        (10,000)
貸倒引当金                          20,000
賞与引当金                          25,000
統一資化ルール                          35,000
課税所得  $                   224,250

 

上記をご覧になりますと、会計上の利益は$150,000ですが、税法上の所得は$224,250と$74,250増えていることがわかります。そして税金はこの課税所得に基づいて法人税率を使って(連邦は21%、州の税率は州によって異なる)計算されることになります。

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