アメリカにコミットして腰を据えてアメリカでやっていこう!と決意する日本人がお世話になるお役所には色々ありますが、毎年必ず関わることになる政府機関というと、そんなに多くはありません。アメリカに来る前にはあれほどお世話になった移民局も一旦入国すれば関わる頻度は減りますし、運転免許証の更新も数年に一度のことです。しかし、IRS(Internal Revenue Service)という連邦政府機関は、アメリカ居住の真剣度がまだまだ低い頃にはさほどその存在の大きさは感じられないものですが、じっくりとアメリカに住んでみようとコミットすればするほど、しっかりとしたお付き合いをしていく必要のあるお役所なのです。毎年の確定申告。日本の国税庁にあたる「アメリカ合衆国内国歳入庁」です。

 

IRSの組織体制

IRSでは、かつては日本と同じ「本部(IRS)、国税局、税務署」という機能別の三層体制がとられていました。時と共にその管理運営が数々の政治スキャンダルに使われ、国民と議会から様々な非難を受け続ける結果となり、1998年には「IRS組織改革法」施行、大きな組織編制が行われました。納税者権利を保護する規定がこの法律に追加され、IRS直下にあった国税局と税務署は廃止、代わりに納税者別の機能を持つ、4つの局が新設されました。現在もこの体制は続いています(図参照)。

 

内国歳入庁の由来とは

ここでひとつ「内国歳入庁」という名称がつけられた背景をご紹介しましょう。時代はアメリカ初の消費税が創設された1862年の南北戦争までさかのぼります。

 

当時のリンカーン大統領と議会は、戦費を調達するため税徴収を決定し、その際、対外的な歳入(関税)を徴収する他の連邦政府機関と対比させるために、敢えて、“内国”という言葉を使いました。その後、消費税はいったん廃止されますが、1910年代の第一次世界大戦時には戦費調達のため復活し、1950年代には名称も“庁”から“局”へ変更され、現在に至ります。

ちなみに、所得税は1798年にイギリスで創設されたのが始まりです。日本での創設は明治20年(1887年)ですから、アメリカでは日本より25年も早くに、イギリスでは90年も前に創設されたことになります。

 

IRSの処理能力

さて、1998年の組織改正法以来、IRSは毎年どれほどの確定申告書を処理しているのでしょう。その数、2億5300万件、税収入は3.46兆ドル(単純100円換算で346兆円)、そして、税収入源の4割が個人税です(2019年度)。一方、日本のそれは107兆円、その収入源の4割が社会保障税となっています(2018年度)(図参照)。収入源にこれほどの差があるということは、両国の税制にも違いがあるということ。日米の国境を行き来する日本人にとって、両国の税務知識、税徴収機関に関する知識を備えておくことは、わが身を守る術のひとつとなることでしょう。

アメリカ合衆国内国歳入庁・IRS。日米をまたにかけるクロスボーダーの日本人にとり、長いお付き合いになる連邦政府です。これからクロスボーダー生活者が押さえておきたいアメリカ税務、IRSへの申告、報告、罰則などについてお話ししていきます。

この記事に関するご質問はお気軽にハラー基江[email protected]まで。CDH会計事務所では米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。弊社のYouTubeクロスボーダーチャンネルではいろいろな内容を取り上げて説明しています。是非ご覧ください。また無料相談も行っています(予約リンク)。