永住権者マニュアル

ソーシャルセキュリティにはWEPというルールがあります。WEPとはWindfall Elimination Provisionの略です。(https://www.ssa.gov/pubs/EN-05-10045.pdf

日本での年金受給をソーシャルセキュリティ(以下“SS”)の申し込みの際に報告すると通常もらえるべきソーシャルセキュリティの金額が減額されてしまう制度です。減額の額は海外の年金額の50%を超えないようにと規定されておりますので、毎月数百ドルくらい減額されるようです。(この5割までの制限を”WEP Guarantee Provision”と呼びます。)

実務上は、SS受給の申し込みの際に海外の年金をもらっているかと聞かれ、その年金の内容を話し、証拠書類を出してWEPが適用されるか否かが判定されます。

次に良く問われる質問に回答します。

1、国民年金はWEPの対象外か?

日本の年金は厚生年金と国民年金というふたつの制度で成り立っています。同様に多くの国では日本と同様にふたつの制度で年金制度ができています。以下面白い例がございます。

以下の国が日本の国民年金に似た制度(個人のEarningsに関係なく拠出される)を持ち、SSオフィスはそれらをWEPから除外しているのです。それはオーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェーとスエーデンです。(参考文献 GN 00307.290 SS)―GN ***とは米国政府のRegulationの一部で、WEBで簡単に検索できます。

しかし現在のSS制度では日本の国民年金は上記の除外例に含まれておりません。つまり現行では国民年金はWEPの対象になります。少し不公平感を否めません。実際にこの点に関して真面目に日本政府に働きかけている方がおります。

そのなかで著名なのが「海外年金相談センター」を主宰している市川俊治さんです。(http://nenkinichikawa.org/index.html) 市川さんはシカゴにも駐在経験のある日本の年金とWEPに大変詳しく、国民年金がWEPの対象外であるとして活動もされております。市川さんのメールアドレスは以下の通りです。([email protected])

私も国民年金はWEPの例外になると思います。上記の参考文献ではその国(つまり日本)が年金の性格に関して国としての正式な書類(Award NoticeかLetterと書かれています)を出してあればWEPから外すと述べています。また同時に審査官は、年金の内容をよく申請者(つまり読者)から聞いて判断するようにと指示がされております。(GN 00307.290)

日本の厚生年金はもちろんWEPの対象です。

2、SS申し込み時には日本の年金をもらっていないようにするのは有効か?

さてSSの申し込みの際に日本の年金をもらっていなければWEPの対象にはなりません。申込時に、日本の年金をもらっていないのが真実だからです。しかし残念ですが、その時点以降から日本の年金をもらった場合は、SSオフィスに連絡しないといけない規定になっています。(SSA Pub. No. 05-10137, Page 11)その際にWEPが適用されることになります。

3、日本の年金申し込みの注意点

さて、日本の年金の申し込みです。これも実は海外在住期間が長ければ長いほど複雑になり、難しくなります。例をあげましょう。

(1)   日本の年金をもらうにはいわゆるカラ期間の証明をしないといけません。その証明方法が複数あります。そのなかで一番良い方法を選ばないといけない。

(2)   振込先を決めないといけない―米国の口座か日本の口座か? 振り込みの手数料は?

(3)   年金の金額により源泉の必要がある

このようにまだアメリカに本拠を持つ皆様には難しい問題ばかりです。最悪のケースはこの作業を完了するために何度も日米を往復しないといけないかもしれません。そんな無駄を省くために、前述の市川さんは、日本の年金申し込みの代行してくれます。ご興味のある方はぜひご連絡してください。

4、日本の年金で忘れてはいけない点

二点どうしても理解しておいていただきたいポイントがあります。

(1)米国籍を取られていてももらえます。(国籍は関係ありません。)

(2)10年以上や、25年以上日本で働いていなくても、若いころ数年でも日本で働いていれば、いまは社会保障協定などを利用してもらえます。ぜひあきらめないでください。(日本の高校や大学を卒業して数年だけ日本で仕事をした人でももらえます。)詳しいことは上記市川さんまでご連絡してみてください。

CDHでは米国永住者の方の税務申告作成のサービスを行う傍ら、永住者のさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。米国の日本人永住権者は、日米の経済そして、国際交流を支えるまさに「縁の下の力持ち」だからです。また永住権者が抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、投資、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。英語が母国語でない永住権者には、大変理解が難しいルールなのです。私もF-1ビザからアメリカ在住すでに33年になりました。今「専門家としてぜひ永住者の役に立ちたい」と願ってやみません。

連絡先:藤本光、[email protected]  Cell (630) 253-0215

(注)この文章は、筆者が現時点で正しいと思われる情報を記事に分かりやすく要約したものです。あくまで読者の参考にして書かれた文章であるために、実際のルールの適用は必ず読者の信頼される税務の専門家と相談の上行ってください。この文章は税法の解説を目的としたものではなく、あくまで読者の注意を喚起するのが目的で作成されました。