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トラスト(信託)を理解するのは、在米日本人にとってはやっかいな作業です。第一にトラストには特殊な用語が多すぎます。一番最初にスターバックスに行かれて、普通のコーヒーを注文しようとしたときに、戸惑われたときのことを思い出してください。トラスティー、ベネフィッシャリー、グランター、セトラーなど、難解な言葉が多すぎます。用語を理解した後は、日本にはない考え方に惑わされます。日本では「包括承継主義」-相続人が直接承継する主義であるのに対して、英米法系諸国では、「管理清算主義」―遺産財団に財産を一旦移して、裁判所の管理下で分配する制度とは違うからです。そんなハードルがあるなかで、わかりやす信託を説明してみましょう。

では会社と比較対象することから、学習を開始しましょう。また今回の記事では用語の解説も行います。今回の記事は以下の二つの本を参考にさせていただきました。「財産を減らさない分散管理のポイント100」財経詳報社、「信託と相続の社会史」日本評論社。

  • 会社と信託

会社の株主は、株式を所有することで、会社を所有します。そのため株主は、会社が持つ経済的な権益(配当や、株の売買によるキャピタルゲインの利益)と会社を支配する力(支配力)を持ちます。支配力とは、会社の行動をコントロールできる力です。会社は、「法人」と呼ばれるくらいですから、法律により与えられた人格があります。これが会社です。
これに対して信託とは、委託者が、土地、現金、株、債券といった特定の資産を受託者に移転し、受益者のために、その資産を管理支配させる法的な取り決めの言います。つまり、会社のように、株主に支配されているのではないのが信託です。また会社のように法的な主体にはなりません。支配権は、受託者が有していて、権益は、受益者が受けるようになります。

  • 信託の構成要素
    この記事の図をご覧ください。1について、もう少し詳しく説明しましょう。委託者は、自身の財産を信託に拠出します。この委託者のことを英語でGrantorであったりSettlorと呼びます。委託者に頼まれて、資産を管理して、Distributionを行うのが受託者です。日本で言いますと、信託を管理する人になります。こちらは英語ではTrusteeと呼びます。委託者に選ばれて、信託から恩恵を受ける人を「受益者」と呼びます。英語ではBeneficiaryです。
  • 具体的な例としての生前信託

リビングトラストと呼ばれる生前信託においては、読者自身が委託者(Grantor)です。自身の資産を信託に預けて、受託者(Trustee)が管理します。リビングトラストの場合は、委託者(Grantor)である読者が、同時に受託者(Trustee)になる場合が殆どです。もしご本人がお亡くなりになられたときに、配偶者や、子供が受託者になります。そして、利益を受ける人は、多くの場合は、配偶者や子供であり、なかには、非営利団体に寄付するので、非営利団体が受益者(Beneficiary)になる場合もあります。

  • 信託の意義

信託は、英国のコモンロー法と対比するエクィティ法から発生した考え方で、遺言に代わるものとして発展してきました。おそらく遺言に代わるものの意味で、理解できると思いますが、近年の高齢化により、五人に一人が認知症となる時代には、自身が判断能力を失っても、信託があれば、死んで遺書を読んでもらう前に、自分のしっかりしていたときに考えた通りに資産を分配できるというわけです。実は、日本でも「家族信託」という制度が今日では発展しているそうです。日本にはない考え方から発展してきたトラストですが、最近は、社会の変化に対応すべく発展しているように見受けます。

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