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出国税はまだまだ多くの方が誤解しています。今回は、税金がかかる前の資産の含み益の計算方法について実例を使った説明します。以下、Covered Expatriateと判定されたと仮定して、含み益の計算をしてみましょう。

1, 3つの資産

上記の表のように資産がA,B,Cの3資産あったといたします。そしてそれぞれの資産には、原価、市場価値、含み益(損)があります。

この記事では細かい説明は省略しますが、原価とは、購入価格になります。米国の居住者になられる前に購入した資産の原価の計算方法は、異なります。資産Aの原価は、$200,000です。次に永住権放棄日の前日の市場価格を算出します。資産Aの場合は、市場価格は$2,000,000と仮定してあります。したがって資産Aの含み益は$1,800,000($2,000,000-$200,000)になります。

このようにそれぞれの含み益、含み損がある資産を洗い出します。

この例の場合は、資産Aと資産Bに含み益があり、資産Cは含み益がなく、逆に含み損が$300,000あります。

この方の場合には、全ての資産を見直した際には、含み益の合計が、資産Aと資産Bにより$2,000,000($200,000+$1,800,000)になります。

2, 控除額の配布

毎年IRSが出す出国税の控除額があります。2020年度の控除額は$737,000になります。この控除額を含み益がある資産に配布をします。以下が計算式です。

資産A: $1,800,000÷$2,000,000x$737,000=$663,300
資産B: $200,000÷$2,000,000x$737,000=$73,700
総含み益に対する個別の資産が持つ含み益の割合で配布します。

資産Aの含み益:$1,800,000-$663,300=$1,136,700
資産Bの含み益:$200,000-$73,700=$126,700

そしてこれらの含み益に対して皆様に該当するキャピタルゲインの税率が適用され、出国税が計算されるのです。

ここで忘れていただきたくないのは、含み損のある資産は計算のなかには含まれないということです。

3, 注意点

この含み益には、キャピタルゲイン税率が課されますがが、この税金以外にIndividual Retirement Account (IRA)などのA Specified tax deferred accountと呼ばれるものは、別途税金がかかります。また401(k)などのEligible Deferred Compensation Itemは、強制的に30%の源泉税がかかってしまいます。その説明はこの記事のスコープ外になりますが、これらの総称で出国税と言います。

最後に上記の計算例はForm 8854 のインストラクションに出ている例をそのまま使用しました。[i]

 

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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[i] https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/i8854.pdf