国外転出時課税制度について

あなたが米国の居住者であり、日本でお亡くなりになったお父さんやお母さんが、一億円以上の有価証券などを保有していた場合は、相続時に相続した証券の含み益に、日本の所得税が課せられる制度があります。今回は、このポイントについて前回に加えてもう少し詳しく説明します。

相続と同じで、日本に居住されている方からの贈与でも、税金は、同じ対象になりますので、この点についても説明します。(基本的には同じだと考えてください。)

これは国外転出時課税制度と申します。2015年7月1日から適用されています。

通常相続時には、日本では相続税がかかります。国外転出時課税は所得税ですから、相続税と所得税の両方がかかるというわけです。だから、本題に「余計」という言葉を使わせてもらいました。

有価証券などと言いましたが、簡単に言いますと、株券などです。例えばトヨタ、京セラなどの株券ですね。正確には、有価証券等、未決済信用取引、匿名組合契約の出資の持ち分、未決済の信用取引、未決済のデリバティブ取引が含まれます。殆どの方は、「株」と覚えてもらえればいいと思います。

1億円はどの時点での一億円なのかと言いますと、相続の場合は相続時です。贈与の場合は贈与時です。一億円の判定時期はと申しますと、同じく相続時や贈与時です。例えば、お母さんが1億円以上の市場価値の株券を持たれていて(贈与時に)、あなたや、あなたの子供さんに1000万円の贈与をした場合を考えてみましょう。お母さんがその株を買ったときの金額が600万円と仮定します。この場合は、含み益である差額の400万円に日本の所得税がかかるというわけです。これは贈与の場合ですね。

では、相続の場合で、かからないケースをご紹介します。私は、今年の3月に日本で父が亡くなりました。母と妹と私で相続をしたのですが、幸いにも(?)父は有価証券は総額一億円ありませんでした。したがって私は、国外転出課税制度から免除されました。

最後に重要なポイントをひとつ説明します。あなたが国外退出をする日から過去10年間で、日本国内に5年を超えて住所を有していると対象になります。ですから、たまたまお母さんの持っている株の値段が上がって、一億円を超えたときに、あなたが日本から転出しても、さかのぼってみて、あなたが過去10年間でヨーロッパに6年駐在していて、ここ4年間だけは日本に住んでいたという場合は、この税金の対象になりません。もちろん過去10年間日本に住んでいた場合は、対象者です。

では、このようなことが起きたときには、米国での税務はどうなるでしょうか? 二重課税は避けることができるのでしょうか? これは後日ご説明したいと思います。また、この制度には、日本の税金の支払いを遅らせたり、対象外になったりする特例もございます。詳しくは、日本の税理士の方にご相談ください。CDHでもご紹介できます。

CDHは、このような米国在住の方のクロスボーダーの税金のご相談を受け付けます。また財産管理のサービスも提供しております。

米国では、帰国時には、特殊な制度があり要注意です。さらに日本からの相続、贈与を受けた場合にも米国での守らないといけないルールがございます。同時に日本の制度も変わりつつあります。なかなかこの分野に精通している会計士は米国にはおりません。

皆様が、この分野での問題点、お悩みをお持ちでしたら、いつでもお気軽にCDH会計事務所の藤本光まで(Tel (630) 253-0215, [email protected])にご連絡ください。シカゴ・ミルウォーキー地区に弊社の事務所がございますが、全米からのご質問、ご相談をお引き受けいたします。