<米国の居住者と非居住者>

 

米国では個人が確定申告をする義務があります。その際の申告身分より課税対象となる所得や控除可能な項目が異なります。 米国市民以外の人が米国居住者であるか非居住者であるかの判断は、グリーンカードテストか実質的滞在テストによって決定されます。グリーンカードを所持していれば、全世界中どこにいても米国居住者となります。実質滞在テストでは、申告対象年度に31日以上滞在し、当該課税年度を含む3年間の滞在合計(当該年度の滞在日数+前年度滞在日数の1/3+前々年度の滞在日数の1/6)が183日を超える場合は居住者と見做されます。

(例)当該年度93日、前年度183日、前々年度180日の場合、93+183/3+180/6=184日

 

1, 米国居住者(Resident Alien) の課税

課税対象年度内の日本を含む全世界所得が申告対象となります。標準控除又は項目別控除の有利な方を選択できます。

 

2, 米国非居住者(Non-Resident Alien)の課税

課税対象年度内の米国源泉所得のみが申告対象となります。日米租税条約において、利子およびキャピタルゲインは米国非課税となります。ただし標準控除は認められず、年度末に結婚していても夫婦合算申告の適用は認められません。項目別控除でも州税及び地方税、寄付金控除や損失控除など限られた項目しか認められません

F/J/M/Q/Aビザをお持ちの方は特別規定が適用され、様式Form 8843 (Statement for Exempt Individuals and Individuals with a Medical Condition) を提出することにより非居住者扱いとなります。詳しくは前述の「学生ビザ」の項目をご参照ください。

 

3, 二重身分者 の場合

駐在員の場合、赴任又は帰任年度は入出国の時期により課税対象年度内に非居住者期間と居住者期間がある場合、税法上では二重身分者となります。

駐在員でなくても、アメリカに来た年と、アメリカを去った年は、課税年度内に非居住者期間と居住者期間がある二重身分者となります。

標準控除は適用されず項目別控除のみ適用となり、納税者が既婚者の場合は夫婦合算申告も認められないので夫婦個別申告となります。

教育費税額控除、稼得収入税額控除等が適用されません。

但し非居住者または二重身分者の場合一定の条件を満たせば通年居住者として夫婦合算申告も可能となります。

<最初の年のエレクション>

駐在員やそのご家族は、赴任年度はその年度の実質滞在テストで非居住者となる場合でも、赴任年度に31日以上滞在し、その翌年度に実質滞在テストの183日を満たす場合、その赴任年度に米国居住者として確定申告することが可能です。

その場合、婚姻の有無には関係なく、赴任年度の赴任日から米国居住者扱いとなります。もちろん、駐在員でなくても、米国に来た最初の年はこの特別ルールは適用されます。

<条件>

      • その前年度は米国居住者ではないこと
      • 赴任年度(米国初年度)の翌年には実質滞在テストの183日をクリアできること

その183日をクリアできるまで、初年度の確定申告書をIRSへ送付することはできませんので、まずはForm 4868を提出し、延長申請を行い、翌年に183日テストをクリアできてから確定申告書をIRSへ送付します。但し、もし未納税額がある場合は4月15日までに支払わなければ、ペナルティの対象となり利子が加算され、延滞納付金に対してペナルティが課されることがあります。

 

<日本の居住者 と非居住者>

1, 国内法による区分

居住者とは国内に住所を有し、又は、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人をいい、居住者以外の個人を非居住者と規定しています。

住所とは個人の生活の本拠をいい、生活の本拠かどうかは客観的事実によって判定することになります。従って住所はその人の生活の中心がどこかで判定されます。

一方で居所はその人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所とされています。

 

2,日米租税条約による区分

二重課税防止のためいずれの国の居住者とするかの判定方法を下記の順番で定めています。

①恒久的住居の場所、②利害関係の中心がある場所、③常用の住居の場所、④国籍

 

3,日本の課税所得の範囲

居住者は非永住者以外の居住者と非永住者に分かれます。

 

(1) 非居住者以外の居住者

非居住者以外の居住者は所得が生じた場所が日本の国内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。

 

(2) 非永住者

非永住者とは居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有していた機関の合計が5年以下である個人をいいます。

この非永住者は所得税法に規定する国外源泉所得(国外で生じた所得)以外の所得と、国外源泉所得で日本国内において支払われた、又は日本国内に送金されたものに対して課税されます。

 

(3) 非居住者

上記居住者以外の非居住者は国内源泉所得に課税されます。

これらの日本の税法に関しては下記のサイトから抜粋しましたのでご参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2010.htm

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2873.htm

 


CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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