今回は、これから永住権の放棄を考えている方のための解説である。

永住権保持者とアメリカ市民というのは、全世界の所得をアメリカの税務当局に報告する義務があるのはご存知だろう。この権利を放棄するということは、逆を言えばアメリカの税務当局にいままで持っていた、あなたの全世界からの所得に対する課税の権利を、放棄させるわけだから、税務当局としてもそう簡単に許してはくれないわけだ。

まず第一に放棄時に税務の書類を提出を義務付けられる。これがForm 8854である。この書類が提出されないと税務上で永住権を放棄したと見なされない。注意しないといけないのは、どのタイミングで永住権を放棄するかである。例えば2016年度に日本に帰国したとしても、この2018年度まで気が付かず、永住権の放棄を2018年に行った場合は、最低でも2017年と2018年にもう一度申告書を提出しないといけない。永住権の放棄の手続きは米国の領事館や大使館でI-407というフォームを提出して、グリーンカードに穴をあけられて終了する。

ただしForm 8854は過去15年間のうち最低8年永住権を保持していた人にのみ適用される。つまり長期の永住権保有者だけに適応される。

つまり永住権の保持が8年未満の方は、移民法上の放棄と同時に自動的に米国の非居住者となり、その時点までは居住者として取り扱い、それ以降は普通の非居住者になる。つまりForm 8854の提出の必要はない。

次にフォーム提出の該当者に対する注意になる。

もし該当者がルールを知りながらこのフォームを出していなかった場合は1万ドルのペナルティが課せられる。

また、もしあなたが放棄時に全世界の純資産(負債分を引いた純資産)が市場価値が200万ドルを超えており、このフォームでは放棄時に純資産を時価で販売したと仮定したときに、みなし利益に対する課税が発生する。この利益には、2017年で$699,000の控除があるため、利益がこの金額より少額の場合は課税されないが、この金額以上の場合は課税される。売却していないわけだからキャッシュが入ってきていない時点での課税はこたえる。この場合は、放棄時の前に売却してしまうという選択肢もある。そのほうが、税金が少なくなる方法もある。

Form 8854を放棄時のあとも毎年継続して提出しなければならないケースも存在する。ただ、こちらはリポーティングの意味であり、大事なポイントは、前述の不必要な課税を避けることである。

要約すると、永住権の放棄を考えている方で、上記の保持期間あるいは、純資産の含み益で該当しそうな方は、事前に税金の影響を慎重に考えることが必要だということだ。さらに追加すれば、連邦税を毎年16万ドル程度以上支払ってきたかたも該当になる可能性がある。永住権の放棄の前の必要不可欠のプランニングとして考えてもらいたい。

CDHでは、帰国前のプランニングのご相談を受け付けます。少なくとも2,3年前からしっかりと計画されて帰国されることをお勧めします。またCDHでは、ご帰国前の資産管理のサービスも行えます。お気軽にご相談されてください。

(注)この税法に関する文章は、筆者が現時点で正しいと思われる情報をニューズレター用に手短に分かりやすく要約したものです。あくまで読者の参考にして書かれた文章であるために、実際のルールの適用は必ず読者の信頼される税務の専門家と相談の上行ってください。この文章は税法の解説を目的としたものではなく、あくまで読者の注意を喚起するのが目的で作成されました。

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