クロスボーダーライフをサポートする

米国の居住者、つまり米国市民、グリーンカード保持者、そして183日ルールを満たしている居住者が、海外の会社、トラストなどを保有するのは税務上非常に複雑な状況に陥ります。今回の記事は、海外の会社を持った際の注意点という観点から説明したいと思います。

  • Form 5471 (Information Return of U.S. Persons With Respect To Certain Foreign Corporations) [i] の提出義務
    非常に難解なフォームで、普通の人には理解不能です。読者のために敢えて乱暴な書き方をすると海外の企業の10%以上の株式や価値を持っている米国居住者は毎年提出義務があります。提出期限は、個人の税務申告の期限と同じで、Form 1040の一部として提出します。未提出や、不正確な情報の提出へのペナルティは$10,000からスタートして、$60,000が最高金額です。
    該当者はForm 5471に精通した会計士をアドバイザーとして雇うことが必須であると筆者は信じます。このフォームと後述するルールは、それだけ難しく、正確に理解し、コンプライアンスをするためにはプロがいないといけません。
  • Subchapter F IncomeとGILTI税
    Subchapter F Incomeとは、米国の税法の951~964条に規定されています。1961年に導入されて、米国株主等により支配される外国子会社の所得を、米国株主等の株式所割合に応じ、当該米国株主等の所得に合算して課税するというものです。[ii] 端的に書きますと、受け取っていない未配当の利益にも、株主は課税されるという制度です。
    またGilti税とは、米国税法に基づき一定の計算方法で算出した被支配外国法人 “CFC” (Controlled Foreign Corporation)の所得を米国の株主側で合算課税される制度です。 GILTI課税所得は上記の被支配外国法人所得からその法人が所有する有形償却資産の簿価の10%を差し引いたものとなります。[iii] Giltiとは、Global Intangible Low-Taxed Incomeの略称です。
    さて、言葉の解説をしましたが、要点は、海外の会社の利益に対して、所有しているだけで、いろいろな形で課税される可能性があることを言いたいわけです。Form 5471では、海外法人の財務諸表も記載するとこがあります。どれだけ利益が出ているのかはIRSが分かる仕組みになっています。
  • この海外会社との個人の取引き
    さて上記の2は、法人にも該当します。国際化、グローバル化が進み、大企業が税金の安い国に製造拠点を作ったり、会社を作ったりする傾向に対応するべく発展してきました。しかし、個人にも当てはまってしまうというのが、この税制の難しいところなのです。
    つまり自分が所有している海外の会社から、配当を受ける、給料を受ける、そして取締役の報酬を受けることは一般的にある取引です。これらの取引きは、日本にある企業の場合は、日米租税条約と日米両方の税法が基礎になり、課税が決まり、源泉税率が決まります。一国の課税だけでも大変複雑なのに、もう一つの国の税務と、さらに条約を理解しないといけないわけです。以下に大変な作業かお分かりいただきたいと思います。
    さらにこの会社から借入をする、そして、この海外企業が米国に不動産を購入などもよくある取引です。簡単に考えると自分とは関係のない取引に思えますが、そうでないケースが多々あります。
    税務申告の提出期限のぎりぎりになり、ご自身の会計士に巨額の税金をIRSに払ってくれと言われることを避けるために、海外の会社が何かするときは、必ず米国の皆様の税務アドバイザーに事前に相談してください。これは必須のことだと思います。
  • 最後に
    読者のなかで、日本の会社の株主になっている方、すぐにご自身の米国での税務コンプライアンスに問題がないかをプロに問い合わせて確認してください。この分野は、何度も書きますが、普通の会計士では取り扱わない分野です。大変重要なポイントですので、繰り返しになりますが、書かせてもらいました。
  • CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

なおYouTubeでも内容を説明しています。「CDHクロスボーダーファミリーチャンネル」で検索してみてください。また無料相談も行っています。こちらのリンクからご予約ください。メールでのご質問は、面会させていただいてお答えしております。https://outlook.office365.com/owa/calendar/[email protected]/bookings/

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[i] https://www.irs.gov/forms-pubs/about-form-5471

[ii] https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/backnumber/journal/12/pdf/12_05.pdf

[iii] https://www.cdhcpa.com/ja/global-intangible-low-tax-income-and-foreign-derived-intangible-income/#:~:text=GILTI%E3%81%A8%E3%81%AF%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E7%A8%8E%E6%B3%95,%E5%B7%AE%E3%81%97%E5%BC%95%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82