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米国に住み、実際に一軒家を賃貸しているものとして、また米国公認会計士として賃貸物件の損益予想つまりシミュレーションの作り方を解説します。

大きなステップは3つあります。

 

1. 減価償却費の予想

一軒屋の場合、減価償却の対象になる建物部分とそれ以外の土地の金額をまず確定させます。IRSはこの方法についてのガイダンスはほとんどありません。ただし参考になる資料もあります。固定資産のビルや、Appraisalです。

一番簡単な方法をご紹介します。建物80%~90%、残りを土地とする方法です。地域の土地の値段にもよると思いますが、米国の各地で住んできた筆者としては保守的には80%、逆では90%を建物にする場合が多いと思います。こちらは各地の不動産のエージェントや会計士にご確認ください。ロスアンゼルスなどでは、75%が土地の価格になるそうです。地域性は必ずあると思います。

さて建物の金額が購入金額に対するパーセンテージで決まったあとは、一年間の減価償却費を計算します。米国では賃貸などの商用の居住用建物は27年半の定額償却ときまっています。つまり27.5で割れば、一年間の減価償却額が出ます。

こちらが毎年の税務申告で損金算入できます。注意点は、一年の途中で購入した場合は月単位で減価償却費が計算されることです。

実例でご紹介します。$300,000の家と仮定しましょう。80%が建物部分とすると、建物部分は、$280,000になります。一年の減価償却額は$280,000を27.5年で割り、$10,181になります。

 

2. 家賃の予想

こちらは難しい計算は必要ありません。その地域で同じような家がどのくらいで賃貸されているかを調べれば良いと思います。不動産のエージェントに聞くのも良いでしょうか、インターネットで検索してみるもの良いかもしれません。

米国で良く聞かれるのは、物件が所在する学区です。その学区に良い評判の高校があると家賃が高くなるようです。また近くにアメリカ軍の施設があったり、大企業のオフィスがあったりすると賃貸需要も高くなり、需要と供給の関係で家賃が高くなります。

さて、一年12ケ月の期間がすべて賃貸できると考えるのはあまりに楽観的です。それは前の店子が出た後での清掃、新しい店子を探すためのショーイングと呼ばれる活動があり、そして候補が出た後のクレジットスコアーなどの審査があるからです。もちろん最後に契約書をレビューしてもらい、サインをしてもらうプロセスが残っておりますので、この期間を必ず想定するべきです。

10ケ月や、11ケ月を予想されるのが良いのではないでしょうか?

3. 税金を含めたその他の経費の予想

最後にその他の必要経費の予想です。

          • 不動産税―毎年不動産税がかかります。去年の税額をもとに数パーセントの上下の調整をします。不動産税は物件の価値が上がれば、だいたい上がります。
          • 旅費―物件をチェックに行ったりしたときの旅費は経費項目です。緻密に記録を取り、費用として落としましょう。1マイルいくらというIRSの基準が毎年あります。
          • Home Owners’ Association Fee-いわゆる共有費です。こちらも予想は難しくありません。
          • 保険代―ご自分の投資ですので、損害保険が必要です。
          • 修繕費―ここが一番予想が難しい費用です。一軒家の場合は治すものがたくさんあります。エアコン、ファーニス(暖房の設備)、地下水のくみ上げ用のポンプ、スプリンクラー、皿洗い機、洗濯機、トイレやキッチンの水回り、床の水漏れなど、次から次へと修理が必要です。ここをうまくコントロールできると利益が出やすいと思います。
          • 減価償却費―1で説明した費用ですが、現金が出ていく費用ではありません。キャッシュフローには影響しませんが、物件を販売する際にRecapture と言ってそれまで損金算入していた累積減価償却額に税金がかかります。

 

4. 最後に

不動産は、減価償却という大きな費用があるので、帳簿上はなかなか利益が出ないビジネスです。利益が出ない場合は、ハワイなどの特殊な例を除いて税金はかかりません。税務上からすると大変有利な投資と言えるかもしれません。

上記のポイントをしっかり押さえて、現実的な損益予想を立ててください。

 

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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