クロスボーダーライフをサポートする
米国居住の人は、滞在年数が長ければ長いだけ、ソーシャルセキュリティ(“SS”)ベネフィットの受け取る金額の仕組みが理解できてきます。
しかしSS税を数年しか支払わなかった人で、自分がいくらもらえるかを理解できる人はごくまれです。第一にはSSベネフィットの老齢年金制度は40クレジット(10年間)を通算で支払わないと、受給の権利を得ることができないからです。
しかし日米社会保障協定により40クレジット以下の人もSSベネフィットを受けることができます。[1] またWindfall Elimination Provision(“WEP”)は、日米社会保障協定でベネフィットを受ける人には適用されません。[2] WEPをより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
この日米社会保障協定を使用して、ベネフィットを受けることができる人は多くの場合は駐在員であり、駐在員がお亡くなりになったときの遺族になります。そして、SS税の支払いは、駐在員の場合はネットギャランティーという制度で、現地の日本企業が丸抱えする場合が多く、当然支払う側の雇用主としては、一年間のSS税の支払いで、本人がどのくらいのベネフィットを生涯受けることができるのかの数字を知り、分析されたいと思います。
しかし、SS制度は本来10年以上、通常は35年以上の支払いを想定しており、1年間のような短期の支払いについての説明がされていません。そこで今回は、SSベネフィットの計算が同じようにされると仮定して、一年だけSS税を支払った人がもらえるSSベネフィットを計算してみました。
注意点ですが、日米社会保障協定に基づくと、最低で6クレジットのSS対象のWageの獲得がないとSSベネフィットを受けることはできません。しかし、この記事では計算を簡単にするために1年間の獲得でSSベネフィットを受けることができると仮定しております。¹の日米社会保障協定をご覧ください。
1.SSベネフィットの計算プロセス-AIMEの算出[3]
1. 自分が今までに受け取られたSS税対象のEarningsを全ての年で調べます
2. 現在の金額に直すためにSSオフィスが決めているAverage Wage Indexを使い各年のEarningsを変換します[4]
3. そのなかからEarningsが多い35年間を抽出し、合計額を算出します
4. 420(35年間)で割りaverage indexed monthly earnings (AIME)を算出します
2.SSベネフィットの計算プロセス-PIAの算出[5]
1.Primary Insurance Amount (PIA) を算出します。こちらはAIMEの額を3つの層にわけ、それぞれに別々のパーセンテージを掛ける方法で行います
2.2021年に62歳になる人の場合は、最初の$996に90%、次の$6002までの層に32%、そして以上の層に15%を掛けます
3.もしその人がすでに62歳になっている場合は、62歳になった年の3つの層に同じパーセントを掛けます。金額は毎年Indexにより大きくなります
4.Cの人の場合は、上記1bのインデックス(Cost-of-Living Adjustments)を使い2021年のレベルに変換します。以上のプロセスで毎月のSSベネフィットの金額が決まります。
3. ケーススタディ
上記の説明ではなかなか理解が難しいと思いますので、実例を使い説明しましょう。以下が今回のケースになります。
1955年生まれ、2020年に日米社会保障協定期間を超えたので初めて一年間SS税を払う。2020年のWageは、SS税の最高額である$137,700.2021年にリタイア。 SS税を支払ったのは通算で一年間のみだが、協定を使い10年(40クレジット)の制限はクリア。妻も1955年生まれ
A. この人の米国での生涯賃金は$137,700です。それ以外にはありません。この数字を420で割ります。ひと月$327.8になります。こちらが上記のAIMEです。
B. 次にこの方のPIAは最初の層の金額以下ですから、90%をAIMEに掛けます。この層の金額も毎年変化しますそしてセント部分を切り下げ、10セント単位にします。結果は$295です。
C. この方は2017年に62歳になりましたので、前述のCOLAが適用されます。2017円で2%、2018年で8%、2019年で1.6%、2020年で1.3%です。結果は、PIAが$318.3になります。これを一年に直すと$3,820 になります。
D.以上が計算の過程になります。この方は日米社会保障協定を使用しており、WEPによる減額はありません。またたとえお亡くなりになっても奥様が存命していれば、奥様もおそらく遺族年金としてSSベネフィットを受給できます。それが21年間続いたと仮定すると、総額で$80,220がこのご夫婦に支払われたということになるわけです。ただし、ここでは遺族年金は、お亡くなりになられた年齢で変わりますので、すべての遺族が100%もらえるとは限りません。注意してください。
いかがでしょうか? ご理解いただけたでしょうか? ご質問がある場合は、ぜひご連絡してください。お役に立てれば幸いです。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
おこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] YouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。
[1] https://www.ssa.gov/international/Agreement_Pamphlets/documents/Japan.pdf
[2] https://www.ssa.gov/international/Agreement_Pamphlets/documents/Japan.pdf
[3] https://www.ssa.gov/oact/progdata/retirebenefit1.html
[4] https://www.ssa.gov/oact/COLA/colaseries.html
[5] https://www.ssa.gov/oact/progdata/retirebenefit2.html