いよいよトランプ減税が適用されてから初めての個人確定申告書申請の時期がやってきました。

このトランプ減税、累進課税率が減少しているため基本的には個人も減税効果を受けることができるのですが、実は今まで各種の項目別控除を取ってきた方々にとっては増税となってしまう可能性がございます。今まで取れていたのになぜか控除が取れなくなった!最終税額を確認してびっくりしてしまった!という悪いサプライズの無いように、下記変更内容をご確認して頂ければ幸いです。

まず、所得税は所得全額に課税されるわけではなく、ある一定の金額は課税対象から外されます。アメリカでは定額控除(Standard Deduction)または項目別控除(Itemized Deduction)のどちらか大きい方を差し引いた残りの金額が課税対象となります。また、人的控除(Personal Exemption)もこれらと同様に課税対象から外されます。

所得税が計算された後に、今度はその課税額から直接税金を差し引いてくれる税額控除(Credit)がございます。課税対象からではなく、課税額から差し引いてくれるため、通常の控除よりも節税効果が大きくなります。

これらの控除の変更点を踏まえて、どの課税対象グループがどういった影響を受けるのかを順番に解説していきます。

<メリットを受けるグループ―今まで定額控除を取っていた方々>

約4,000ドルの人的控除が廃止され、その代わりに約6,000ドル分定額控除が上昇することになりました。このため、今まで定額控除を取っていたグループは 約2,000ドル × 税率、または夫婦合算申告の場合は約4,000ドル × 税率、の減税となります。

<デメリットを受けるグループー今まで項目別控除を取っていた方々

項目別控除を取っていた方々、特に持ち家をお持ちの方にとっては、今回の改定はデメリットとなる可能性がございます。まず、人的控除が廃止されたため、約4,000ドル × 税率、または夫婦合算申告の場合は約8,000ドル × 税率、の増税となります。さらに、州税と地方税を合わせて10,000ドルまでの控除上限が設定されました。仮に2018年度に州所得税9,000ドル、家の固定資産税5,000ドル、合わせて14,000ドルを払った場合、4,000ドル分の控除額を失うことになります。また、持ち家に住宅ローンをかけた場合の金利控除可能であるローン上限も1,100,000ドルから750,000ドルに減額され、「住宅ローンを持ち家の購入や修理、改装に使用した場合のみローン金利を控除することができる」というルールに変更されました。さらに細かい箇所では、災害損失は指定災害地域での損失のみ控除可能となったため高額資産の盗難損失は控除から外され、未還付ビジネス経費の控除などが含まれる2% Miscellaneous Deductionは一部廃止されました。

<メリットを受けるグループ―SSNを持つお子様がおられ、夫婦合算収入が110,000ドル以上400,000ドル未満である方々

子供扶養控除の満額取得上限が110,000ドルから400,000ドルに引き上げられました。これにより、いままで110,000ドル以上の収入があり、子供扶養控除が取れなかった世帯は子供一人あたり約1,000ドルの減税効果を享受することができます。

<ほぼ影響の無いグループーその他

子供扶養控除が1,000ドルから2,000ドルに上昇しましたが、同様に人的控除が廃止となりましたので夫婦合算収入が110,000ドル未満の方々の最終税額の影響は限定的であると考えます。また、2017年度は夫婦合算収入が400,000ドル近くなると、人的控除の段階減少により減税効果が無くなりました。結果的に2018年度の人的控除廃止と最終税額への影響はほぼ同じであると考えます。また、ITINを取得されたお子様は子供扶養控除額を受けられるものの、金額制限がかけられます。

今回の改定で、①累進課税率の減少②定額控除の上昇③子供扶養控除の取得上限の上昇、などの減税効果を受けられる反面、項目別控除が非常に取得しにくくなりました。そのため、一部の高額住宅ローンをお支払いの家庭を除いて、多くの方々が今まで減税効果のあった費用の支払い損となる可能性がございます。今現在住宅ローンをお支払いであるならば、税法上のメリットが少なくなった現状、住宅ローンの繰り上げ返済を行うことも視野に入れておいた方が良いかもしれません。

今回の変更に関して、また米国会計税務に関するご質問がおありの方はお気軽にCDH会計事務所の藤村([email protected])までお問い合わせください。