米国の適格年金を日本の居住者として維持したときの日本の税制
知ってて得する永住権としての知識
7/13/2020
日本に永住権を放棄して住むことになる。しかし401(k)プランなどの適格年金はそのまま米国に維持していたい。そんなときに日本の税制は米国の適格年金にどんな課税をするのだろうか? 今回はこの側面を説明してみました。
1. 背景説明
まずこの記事では以下のプランを代表して401(k)を扱います。IRA、SEP IRA、457プラン、403(b)などの適格年金です。適格年金とは英語でQualified Planと呼ばれます。これらの年金はRothを除いて拠出時には非課税で拠出でき、非課税で殖えて(もちろん損失のリスクもありますが)、受領時に所得税がかかるという米国ならではの優遇税制のもとでの制度です。
日本に帰国して永住権を放棄した場合は、その時点から米国の居住者ではなくなります。そして日本の居住者になります。日本の居住者になれば日本の税金制度の管理下に入ります。米国の税務は、Qualified Planなので、投資利益に税金はかかりません。無税で増え続けます。
2. 日本の税務制度
日本の税金制度に戻りましょう。日本に居住していて海外の投資所得がある場合、利子所得、配当所得、雑所得もしくは譲渡所得などが発生します。そして利子、配当、雑所得は当然課税対象です。これらの所得は実際に受取時に課税ではなく、自分に受け取る権利が生じたときに課税されるそうです。
(もしこれらの所得が漏れていた場合は、日本は更正期限が5年ですので過去の申告漏れは5年間しかさかのぼりません。)
つまり日本の現在の税務制度では米国の適格年金の投資活動中の非課税の仕組みを認識してくれません。米国では課税されるべきでない所得が、日本では通常の投資所得として課税されてしまうのです。
3. 実務
しかし日本の税務当局が米国の適格年金を扱う金融機関と連絡網があるわけではありません。したがって、日本の税務所にとっては、誰がどのくらい適格年金が米国にあり、毎年どのくらい増えているかは、そのステートメントを入手しない限りわかりません。
また実際に毎年の投資利益を確定申告に載せている人もあまりいないのではと想像しています。
つまり現実的には米国の金融機関から適格年金を引き出して、日本の自分の口座に送金して初めて日本の税務当局はその事実を知るのではと思います。その時点で初めて課税される方が多いのではないでしょうか?
4. 結論
このように適格年金をめぐる制度というのはまだまだルールが追い付いていないというのが現実のようです。各国により年金に対する優遇税制制度は違うでしょうし、こちらに日本の税法が対応するのも大変難しいと考えられます。
では皆様はどのように考えれば良いのでしょうか? 現行制度がルールと実務が乖離しているのであれば、いつか変化が来ると予想するのが正しいと思います。いつかは変わると予想しつつ、ある時点で米国にある適格年金を引き揚げる時点を予想すべきであり、その準備を行うというのが筆者の意見です。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
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