「出国許可証」がないと米国を出られないのか?
クロスボーダー生活者がトクする税務知識
8/3/2020
IRSのルールでは、外国人がアメリカを出て、他の国に住む場合は、通称「Sailing Permit」を取らないといけないきまりです。別名、「Departure Permit」です。出国前にIRSのオフィスに出向いて、クリアランスを取りそれで出国するという制度です。クリアランスを取るとは、フォームに“Certificate of Compliance”のセクションがあり、そこにIRSのオフィスでサインをしてもらうことです。米国の税金の取り漏れを防ぐ目的のルールであることは間違いありません。
この制度は法律としては存在するが、実際にEnforceされているルールではないことを忘れてはいけません。つまりルールはあるが、誰も守っていない制度です。私自身はもう十年以上前に一名だけお手伝いしました。ある統計によると二、三年前には1000名ほどがこのPermitを取得したとあります。
だからと言って軽視しては絶対にいけないと筆者は思います。十年前はFBAR(海外金融資産の報告ルール)も殆ど同様で、ほとんど守られていなかったルールです。FBAR同様に、いつ米国政府がこの制度を利用し始めるかはわからないのです。
このルールが適用されない人達もおります。外交官、学生、トレイニーなどだそうです。ビザでは、F-1, F-2, H-3, H-4, J-1, J-2, Q-1, Q-2, B-1, B-2などはこの制約が適用されません。
実際に近所のIRSのオフィスに出向いて、Form 1040-CあるいはForm 2063を提出することが必要で、まだ未払いの税金がある場合はその場合に支払わないといけないとあります。
必要書類は、自身のパスポート、過去二年分の税務申告書、銀行のステートメント、雇用主からの手紙などで、IRSのオフィスで署員が記入を手伝ってくれるとあります。
この記事では1040-C とForm 2063の違いは説明しません。要はこの二つのフォームのどちらかでSailing Permitを取れる仕組みです。名前は、1040-C は、U. S. Departing Alien Income Tax Returnと呼ばれ、Form 2063は、U.S. Departing Alien Income Tax Statement and Annual Certificate of Complianceです。
さて、現実的にIRSのオフィスにこの書類を提出することはまずないと思われます。殆どのオフィスでは窓口自体がないからです。コロナの問題の以前からその傾向はありましたし、コロナ禍の現在では、対面して相談を受けてくれる窓口はないと考えたほうが正しいでしょう。もしこの制度が実際に行われるとすれば、電子的なClearanceになるに違いありません。つまり実務上、ルール通りに行うのがほとんど不可能に近い制度です。
しかしクロスボーダー生活者としては、アメリカ政府の動向に注意して、もしこの制度の実際のEnforcementの動きがあったときに慌てないで、冷静に対応することが重要でしょう。アメリカ政府のことですから、いつなんどき過激な方法を突然施行することもあり得ます。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
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