ソーシャルセキュリティの遺族年金と一時金

 

 

以前、配偶者がアメリカで働いていた人に知ってもらいたい情報です。米国のソーシャルセキュリティ(“SS”)制度には、遺族年金という年金があります。個人がもらえる老齢年金とは別に、SSベネフィットを受け取っていた人がお亡くなりになった場合に、配偶者などが受け取れる年金です。さらに現在$255の死亡一時金も別途でもらえます。今回はこの遺族年金の仕組みを中心に説明します。

注意点としては、個人レベルで違った状況が存在します。下記の説明や、ケーススタディはわかりやすくするためにシンプルな説明に徹しています。詳しくは最寄りのSSオフィスや、米国大使館年金課に必ずお問い合わせください。

1.対象

遺族が米国のSS税を最低で6クレジット支払っていた場合に受給できます。1クレジットとは、三か月(四半期)にあたりますので、6クレジットは一年半を通常意味します。遺族というのは、残された配偶者、元配偶者、扶養していた18歳未満の子供、62歳以上の扶養していた親などが含まれます。[1]

2. 支払額

受け取る人の年齢、婚姻年数、障害の有無、同居しているか、子供の年齢、再婚しているかなどといろいろな場合があるのですべてを説明することは不可能ですが、一般的な説明を行います。残された配偶者が67歳(一般的なフルリタイアメントエイジ[2])の場合は、亡くなった方のSSベネフィットの100パーセント受け取ることができます。[3]18歳未満のこどもの場合は75パーセントを受け取ることができます。[4]

3. 受給の方法

アメリカに居住している場合は、葬儀場(Funeral home)が自動的にSSオフィスに連絡してくれるそうですが、SSオフィスに電話や、出頭することで連絡できます。問題なのは、日本に在住している場合です。

亡くなられた方のクレジットが40以上ある場合は、米国大使館の年金課で、40クレジット未満の場合は、日本年金機構に連絡して遺族年金と死亡一時金をもらうことができます。[5]

4. ケーススタディ

a. 夫は、米国で35年勤務、妻は専業主婦、昨年に日本に帰国
夫は67歳で死亡、妻は現在67歳、15歳の子供を扶養している。夫のSSベネフィットは$3,011―この場合は、妻がフルリタイアメントエイジなので100パーセント、子供も18歳未満なので75パーセント受け取ることができます。合計は175%ですので、金額は$5,269受け取ることができる計算です。しかし、Maximum family amount という総額制限があり、金額が制限されます。この制限は個別に計算することになりますが、詳しくはこちらのページを参照してください。

b.夫は、米国で日米社会保障協定を利用して5年勤務、したがってSS税は一度も支払っていない。妻は専業主婦、昨年夫婦で日本に帰国。夫は67歳で死亡、妻は現在67歳。-この場合は夫が0クレジットで、6クレジットありませんので、遺族年金をもらえることはできません。

c,夫は米国の大学を卒業して4年間米国で勤務してSS税を支払った。以降はタイの現地企業で勤務。昨年夫婦で帰国。日本の年金は支払っていない。夫は67歳で死亡、妻は現在64歳。夫は16クレジットで40クレジットなかったので、SSベネフィットはゼロ。-この場合でも妻は遺族年金をもらえることができます。遺族年金は亡くなった方が40クレジットなくてももらえるからです。

このように、SS制度下での遺族年金は、日本人の遺族にとってはほとんどの場合に受給できるベネフィットです。日本に戻っても忘れないようにしたいものです。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

おこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] YouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。

[1] https://www.ssa.gov/benefits/survivors/ifyou.html#h6

[2] https://www.ssa.gov/benefits/survivors/survivorchartred.html

[3] https://www.ssa.gov/benefits/survivors/ifyou.html#h6

[4] https://www.ssa.gov/benefits/survivors/ifyou.html#h6

[5] https://jp.usembassy.gov/ja/u-s-citizen-services-ja/social-security-ja/ss-faq-ja/