前回書かせて頂いた米国にある財産の贈与と相続についてもう少し補足説明させていただきます。

1.配偶者間の贈与及び相続

お互いに米国市民である配偶者間では婚姻控除により贈与も相続も無制限に非課税です。この婚姻控除は受贈者が米国市民である限り贈与者の国籍は問わず、米国市民、居住外国人、非居住外国人であっても贈与税は掛かりません。ところが受贈者が米国市民でない場合には居住・非居住を問わず2017年度の年間非課税贈与控除枠は$149,000となります。

配偶者間相続でも同様に相続人が米国市民ではない場合は婚姻控除は使えません。グリーンカード所持者を含めて居住外国人である配偶者が相続する場合には適格国内トラストを開設しない限りこの婚姻控除は適用されません。また、相続人が非居住外国人の場合は米国との相続税及び贈与税に関する条約が締結されていない限り、相続税の非課税遺産控除枠$5,490,000も使えなくなります。

グリーンカード所持者であっても贈与税及び相続税に於ける居住地の判定の際に、親、兄弟等家族が日本に住んでいる、将来日本のお墓に入る等、もし将来日本に帰国する意思・意図があると判断されると居住者ではなくなります。一般的に米国市民でない限り遺産税や贈与税で婚姻控除及び非課税枠を利用するのは難しいということになります。

被相続人が非居住外国人で米国に財産がある場合の非課税遺産控除枠は$60,000となり、超える場合は相続発生から9か月以内に遺産税申告書(Form 707-NA)を提出する必要があります。不動産を所有してい場合は不動産鑑定士に依頼し評価額を鑑定してもらい、鑑定費用、弁護士費用等は控除の対象となります。

但し非居住外国人でも日本国籍の場合は日米相続税条約第4条により米国の非課税遺産額を考慮する特例が認められています。これは米国国内にある遺産額の全世界遺産額に対する割合で米国の非課税遺産控除枠$5,490,000を適用することが出来るものです。もし遺産税を納付した場合は日本で外国税控除を適用することも可能です。

2.配偶者間ではない贈与及び相続

配偶者間ではない米国市民・居住者からの贈与は受贈者の居住・非居住者を問いません。米国の贈与税の納税義務者は贈与者であり、2017年度の年間非課税贈与枠は$14,000、生涯非課税贈与枠は$5,490,000となっています。

参考までに非居住外国人から米国外にある財産を居住外国人が受贈する場合には米国では贈与税の対象にはなりません。日本にある親族の財産を米国居住者が相続する場合には日本国内に住所は無くても非居住者無制限納税義務者として日本の相続税の対象となります。但し、もし純相続額、純受贈額が10万ドルを超える場合は米国でもForm 3520で開示報告が必要となります。