12月また3月決算の会社は決算が終了し、また監査やレビューを受けていらっしゃる会社も監査とレビューが終了し、ほっとしたのも束の間2024年度も第二四半期も終わりに近づき四半期決算作業の準備にかかられているかと思います。しかし、たとえ昨年度の決算が終了しても、今年に発生した事象で昨年度の財務諸表を修正しなければならないことがあるのはご存じでしょうか?今回は過年度の財務諸表を修正しなければならない事象についてお話させていただきます。

会計方針の変更

何らかの事情により、一般に公正妥当と認められた会計原則内で会計方針を変更した場合、あたかも過去から採用されていたかのように新たに採用した会計方針を適用する必要があります。例としては、在庫の価格の評価方法を変更した場合(昨年度までは在庫の価格の評価方法は先入先出法であったが今年度に移動平均法に変えた場合)があります。この場合、例え今年度から移動平均法に変更したとしても、昨年度末で在庫の評価方法を移動平均法で行った場合の在庫金額を計算し、この金額と昨年度末、先入先出法で計算された在庫金額との差額を期首の利益剰余金(前年度の利益が異なってくるため)で調整する必要があります。よって、会計方針を変更する際は注意が必要です。下記が在庫の評価方法を変更した場合の調整の例になります。

前期末先入先出法で計算された在庫 $      2,543,678
前期末移動平均法で計算された在庫 $      3,200,059
差額 $       (656,381) 利益剰余金と在庫で調整

ただし、見積もり方法の変更は過年度の財務諸表を修正する必要はありません。例えば売掛金や在庫の引当金の計算方法、固定資産の耐用年数の変更等は見積もりの変更ですので見積りの変更による調整は変更した年に行うことになります。例えば、機械の耐用年数を5年から7年に変更したとします。7年で償却してきた場合の減価償却累計額を算出し、この数字と5年での減価償却累計額との差異を減価償却費と減価償却累計額で調整することになります。過去は5年で償却してきていますので償却額が7年の償却年数の場合より多いため減価償却と減価償却累計額を減らす処理をします。下記が例になります。

5年で2年間償却済み
家具 $            50,000
5年で償却した場合の減価償却累計額 $            20,000
7年で償却した場合の減価償却累計額 $            14,286
差額 $              5,714 減価償却費と減価償却累計額で調整

 

過年度の誤謬

今年度に入って過去の財務諸表に間違いが発生していたことが発覚した際、この誤謬の金額が大きく、財務諸表に大きく影響を与える場合は過去に遡って財務諸表を修正する必要があります。例えば、今年度前期末の帳簿上の在庫の個数が実地棚卸を元に正しく調整されていなかったことがわかった、売上が正しい期間に記帳されていなかったことがわかった、等が該当します。よって今年に入って昨年の財務諸表が大きく間違えていたことが発覚した際は期首の利益剰余金を調整する必要があります。

しかし、後から少額の調整が必要であったことが発覚することはよくあるかと思います。例えば、決算締め終了後、昨年度で売上$1,000の記帳漏れが発覚した、経費計上$800が漏れていることが発覚した、等があるかもしれません。少額であれば財務諸表への影響は軽微なため過去に遡って財務諸表を修正せず、今期で調整することが可能です。ただ、少額かどうか判断するのが難しいこともあるかもしれません。よって、過年度の誤謬が発生したことに気づいた際は会計士の方にご相談されることをお勧めいたします。

弊事務所では記帳代行年度締め、月次及び四半期締め作業のサポートをさせていただいております。ご質問等ございましたらCDH会計事務所の中尾 [email protected] までお気兼ねなくお問い合わせください。