「社内不正(internal fraud)」とは、企業や組織内で従業員、役員、関係者などが不正行為を行い、会社に損害を与える行為を指します。会社は様々なルールを設定していても、ルールを守らない従業員も存在し、人の手による不正を完全に防ぐことは難しいのが実情です。よって、社内不正が発生した場合には調査を行い、原因を分析して再発防止策を考える必要があります。今回は起こりうる社内不正の具体例と不正調査についてお話しいたします。
社内不正の手口
社内不正の手口は多岐にわたりますが、以下に代表的な手口を分類してご紹介します。
- 横領:現金や預金を私的に流用。売掛金の入金小切手を裏書して着服する、など。
- 経費水増し:私的旅行費を出張費として会社から立て替えてもらう、私用として使うための高価なものを顧客への贈答品として処理する、自分あてに小切手を発行して換金し文房具費等で処理する、など。
- 情報漏洩および流出: 社内の重要情報が無断で持ち出され転売、また競合他社に機密情報が提供される、など。
- データ改ざん:財務データの改ざん(売上水増し)等の粉飾決算、勤怠情報の偽装など。
社内不正は動機・機会・正当化の3要素がそろった時に起こる可能性が高くなるとされています。例えば、経済的に困窮している(動機)、監視システムが確立されていないために不正を行いやすい状況である(機会)、自分の業績が評価されず給料にも満足していないため、不正を行っても問題ないはずである(正当化)ということがあります。社内統制の整備において、この3つの要素を考慮することは重要です。
社内不正が発覚した際の対処法
社内不正が発覚した場合、企業は迅速かつ慎重に対応する必要があります。主に以下のような対処が必要です。
- 事実確認: 不正の通報を受けた、または不正の兆候が発見された時点で事実関係の確認を行います。関係者への事情聴取や証拠資料を収集する必要があります。なお、この作業は極秘で行い、不正を行った従業員には気づかれないように行う必要があります。
- 調査チームの編成:上記事実確認作業を行うチームを編成する必要があります。状況によっては利害関係のないメンバー(社内監査部門、コンプライアンス部門、または第三者の弁護士・公認会計士など)が行うことが必要とされる場合もあります。
- 証拠保全:不正の証拠は、不正を行った社員の責任の有無や損害賠償の請求などに関わる重要なものですので、不正が疑われるときは、速やかに不正の証拠を確保・保全する必要があります。
- 社内処分:企業側は不正を行った従業員に何らかの処分を下す必要があります。法的な責任を問わないケースもありますが、戒告や減給、降格、出勤停止、懲戒解雇などが処分の例です。また、刑事責任を問われる可能性もあります。
- 株主及び親会社への報告:不正は会社の財務諸表、ビジネス、また信用にも影響を与える大きな事象ですので、親会社へは速やかに報告する必要があります。
- 再発防止策の策定と実施:調査によってなぜこのような不正が起こったのか、どういう体制を取れば不正を防ぐことができるのかを考え、内部統制の見直しや社員への倫理教育・コンプライアンス研修を行う必要があります。
なお、対処を行う際に、会社は報告した従業員を守る義務があります。報告した社員の匿名性を維持し、危害が加わらないように対応を進めることが重要です
最後に
実際に不正が発覚した場合、社内で調査するには専門知識が必要であり、間違った対処によって事実の解明が困難になるリスクもありますので、調査は外部業者に依頼することをお勧めいたします。CDH会計事務所では不正調査サービスを行っております。また、不正が起こりにくい統制づくりのお手伝いもさせていただいております。ご質問等ございましたら、CDH会計事務所の中尾([email protected])までお気兼ねなくお問い合わせください。