Author | Naoko Lech
【SNS収入・ビザ・会社負担の注意点】
米国に駐在している日本人やそのご家族にとって、税務のルールは非常に複雑です。特に近年では、SNSやブログを通じた副収入の増加、ビザステータスに対する監視の強化、そして会社による税金負担制度(Tax Equalization)に関する誤解など、見落としがちなリスクが増えています。
本記事では、米国で生活・就労する日本人駐在員が知っておくべき税務上の注意点を、実例を交えて解説します。
1. SNSやブログ収入も「米国課税対象」になる
米国では、全世界所得(Worldwide Income)が課税対象です。つまり、たとえ日本の銀行口座に振り込まれた収入であっても、米国に居住している限り、米国の税務申告に含める必要があります。
具体例:
・日本語ブログでアフィリエイト収入を得ている
・YouTubeやInstagramで広告収入がある
・noteやKindle出版で収益を得ている
これらはすべて「自己雇用所得(Self-Employment Income)」として扱われ、連邦税・州税・Self-Employment Tax(社会保障税)の対象になります。
注意点:
・$400以上の収入がある場合、Self-Employment Taxの申告義務が発生
・収入が少額でも、Form 1040 Schedule Cの提出が必要
・日本での確定申告と重複しないよう、外国税額控除(Foreign Tax Credit)の活用を検討
2. 会社による税金負担制度(Tax Equalization)とトラブル回避
多くの駐在員は、会社が米国での税金を負担する制度(Tax Equalization)の対象となっています。しかし、この制度には誤解やトラブルがつきものです。
よくある誤解:
・「副収入や投資収益も会社が税金を負担してくれる」
実際には、副収入や投資収益は自己申告・自己負担であるケースが多く、申告漏れが発覚すると会社との信頼関係に影響することもあります。
トラブル回避のポイント:
・Tax Equalization Policyを事前に確認し、対象となる所得を明確にする
・副収入や投資収益がある場合は、会社のHRまたは税務担当に報告する
3. 駐在員が活用できる節税制度
米国では、駐在員でも以下のような制度を活用することで、合法的に税負担を軽減することが可能です。
IRA・Roth IRA(個人年金制度)
・401(k)に加入できない場合でも、個人でIRA口座を開設可能
・Roth IRAは所得制限あり
***ただし、金融機関によっては、帰任後に口座を閉じなければいけない等の制約がある場合があるので、その場合は、引き出しの際に、罰則金(Early Distribution Penalty)がかかるケースもあるので、ルールをしっかり理解した上で行われることをお勧めします。
学費控除制度
・AOTC(American Opportunity Tax Credit): 大学の最初の4年間が対象。年間最大 $2,500 控除。一部は還付可能(税金ゼロでも最大$1,000返金)。
・LLC(Lifetime Learning Credit): 大学院や資格取得など、生涯学習向け。駐在員本人・配偶者も使用可能。年間最大 $2,000控除。還付不可(税金がある場合のみ控除)。
・学生ローン利子控除 : 学生ローンの利子を年間最大 $2,500控除。
・529プラン : 教育費専用の貯蓄制度。教育目的で使えば非課税。ただし米国外の教育目的での使用は、非課税にならない。
・州によっては、小中学校の学費が控除可能な場合もある。
4. ビザステータスと「就労」の定義に注意
トランプ政権以降、ビザステータスと就労の定義に対する監視が厳格化しています。ビザの種類によっては、就労が許可されていないビザもあり、そのビザでの収入活動は、不法就労と見なされるリスクがあるようです。そのような状態でSNSやブログからの副収入があれば不法就労とみなされる可能性があるかもしれません。該当する収入のある方は、法務の専門家に相談されることをお勧めします。
5. まとめ:自分と家族を守るために「知識」と「準備」を
米国での生活は、キャリアや家族にとって貴重な経験となりますが、税務やビザのリスクを軽視すると大きなトラブルに発展する可能性があります。
・SNS収入や副業は必ず申告
・収入の記録と帳簿の整備をしておく
・会社との税務ルールを明確に
・専門家との連携を怠らない
CDHでは、こうした複雑な税務の問題に対して、日本語でのサポートを提供しています。ご不明点があれば、お気軽にご相談ください。
記事に関するご質問は、レック 公子([email protected])まで。
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