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帰国時に居住用の不動産、つまり自分たちが住んできた家をどうするかは悩むポイントのひとつです。今回は、(1)販売する、(2)賃貸する、(3)贈与するの3つの選択肢のキーポイントを説明して、かつ利点、欠点を比較検討したいと思います。贈与するのが一番税務的には有利な方法だと思いますので、その点を最後にケーススタディで事例を使い復習をしたいと思います。

 

( 1 ) 販売する

持ち家を販売する行為は、税法で保護されていると言っても良いでしょう。シングルで$250,000まで、夫婦で$500,000以下の販売利益は税金がかからない仕組みです。居住用として使っていた年数など細かい規定がありますので注意して欲しいですが、基本的にはほとんどの方が税金を払わないで済みます。もちろん販売の事実も税務申告の上に記載する必要もありません。

帰国されても、代理人を立てることで、販売自体はできます。不動産の販売は時間がかかりますが、この代理人制度を使うことにより、日本に帰国してから販売代金を受け取ることができます。しかし、ゲインがあった場合には、日本の居住者ですので、日本で課税されるリスクがあります。こちらは良く日本の税金の専門家に相談しましょう。

この選択肢の利点は、明らかに現金化つまり資金の流動性です。販売したお金は自分の自由に使えますし、日本でのこれからの生活の糧になります。

 

( 2 ) 賃貸する

賃貸の場合は、米国の非居住者になっても米国で税務申告をしないといけません。一般的に管理人を探して、店子を探してもらったり、管理の代行、帳簿の作成、税務申告の管理などすべてをしてもらいます。

賃貸物件の経営ですから、任せきりにしているわけにはいきません。常に注意が必要です。空き家の期間、新しい店子の質、宣伝費用、保険費用、固定資産税の市はリア、管理費用などさまざまな出費が出て、大きな修繕費を出さないといけない場合は重大な決定をくださないといけないときがあります。

さらに米国にある資産ですから、自身が死亡した場合は米国の遺産税の対象になります。またプロべートという遺産兼任作業もできれば避けたいものです。この手続きもしっかりしたいですし、相続税の申告も手間とコストがかかります。

このように欠点としては、手間がかかり、損をするリスクがあるですが、利点としては、販売時のキャピタルゲインを得る可能性があり、うまく経営すれば毎月キャッシュフローでプラスになることです。不動産のビジネスは減価償却というキャッシュに影響を与えない大きな経費がありますので、税金を払わないで資産価値を大きくする手法のひとつです。

 

( 3 ) 贈与する

贈与する際の一番の利点は日米の贈与税・相続税を避けることができる可能性がある点です。

米国では少なくとも2020年までは大変高額なライフタイムの贈与・遺産控除額があります。2020年度の金額は$11,580,000です。贈与をする人がこの金額を超えなければ税金がかかりません。2021年以降は新しい大統領の元変更される可能性があります。

日本の税法では、受贈者、贈与者の両方が過去10年間で日本に居住していない場合は、日本以外にある資産には日本の贈与税・相続税はかかりません。多くの場合帰国される方と帰国される方の子女はこの条件を満たす場合が多いと思います。つまりアメリカで長く生活された方は、ご本人たちもその子女も日本に居住していなかった場合が多いからです。その場合は、米国にある不動産の資産の贈与を日本政府は贈与税をかけることができません。

注意しないといけない点は贈与のタイミングで米国の居住者のポジションを持たれる方でないとこちらを利用できません。ここで注意しないといけないのは、居住者と非居住者の区別であり、永住権などを放棄された年は居住者としての税務申告のポジションはとれません。

日本の贈与税の非課税枠は一年で110万円で、米国の非課税枠は一年で$15,000です。こちらも覚えておくべき情報です。この金額以下であれば、贈与税の申告書も作成する必要もありませんし、贈与税も日米で発生しません。

 

( 4 ) ケーススタディ

販売と贈与でケースを考えてみましょう。現在の市場価格が$900,000の居住用の家があると仮定します。この家のコストは購入価格と途中でおこなったインプルーブメントで合計で$400,000とします。あたなと一人のお子様は米国在住で、過去10年間日本で居住した事実はありません。

販売した場合は、$500,000の非課税枠が使えるので、米国での税金はありません。帰国前ですので、日本での税金もありません。しかしこの現金$900,000を日本にお住まいのときに子供に相続あるいは贈与するとします。日本で税金がかかるのは間違いありません。50%と仮定すると、税金は$450,000になります。

今度は帰国する前の年に、米国居住者の場合に子供に贈与したと仮定しましょう。前述のとおり贈与税はありません。米国での贈与税の申告は必要です。ライフタイムの非課税枠が減ったことをIRSに報告します。

そして帰国します。日本では税金がかかりませんので、あなたの資産の$900,000は無税で米国にいる子供さんに移ったことになるのです。

 

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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