Author | Tomoko Nakao

日本企業が米国に子会社(Cコーポレーション)を設立・運営する際、米国の税務コンプライアンスへの対応は避けて通ることができない重要課題です。米国では税務申告の制度が日本とは大きく異なり、法人税申告だけでなく、情報開示や州税対応など多面的な義務が発生します。 

 

本記事では、日系企業が米国で子会社を運営するうえで特に重要となる5つの税務コンプライアンス要件を簡潔にまとめました。米国現地法人の管理や税務リスクの把握に、ぜひお役立てください。 

 

  1. 法人税申告(Form 1120)

米国の企業には、連邦法人所得税申告(Form 1120)が義務付けられています。原則として決算月から3ヶ月と15日後(例:12月決算なら翌年415日)が延長申請期限です。申告を延長手続きを行えば半年間の延長が可能になります(例:12月決算なら翌年1015日)。しかし、申告を延長しても税金の支払いは延長できませんので申告書が完成した際に算出される税金の金額を見積もって415日までに税金の支払いを行う必要があります。もし支払いを忘れてしまった、遅延した、また十分な税金を支払っていなかった場合はペナルティーと利息が発生する可能性がありますので注意が必要です。 

 

  1. 情報開示書類の提出(Form 5472 など)

米国法人が外国の関連会社と一定の取引を行った場合、その内容を報告する「情報開示フォーム」の提出が必要です。代表的なのがForm 5472(外国関連者取引報告書)です。このフォームは、米国内税務当局(IRS)に対し、日本本社との資金貸借、サービス提供、ロイヤルティ支払などの取引内容を明示する目的があります。申告漏れには高額な罰金が課されるため、関係会社取引と正確な数字の把握が不可欠です。 

 

  1. 州法人所得税(State Tax)申告

米国では連邦税とは別に、各州ごとに法人所得税や売上税(Sales Tax)などの申告義務が存在します。州ごとに税率や申告要件が異なり、法人所得税がない州もあれば(例:オハイオは法人所得税がない。その代わりCommercial Activity Taxといって総売上ベースでの税金を支払う必要がある)、厳格な報告義務を課す州もあります。特に、複数州で業務を行っている場合やオンライン販売を通じて他州に売上がある場合などには、「経済的拠点(Economic Nexus)」の観点から州税申告義務が生じることがあるため、米国にある会社が州でどのような活動をしているかを把握して各州の制度を個別に確認し、税務申告義務が発生しているかを確認する必要があります。 

 

  1. 支払調書・源泉税関連書類-Form 1099 など

米国では、個人事業主やCコーポレーションではない業者への支払いが年間$600をこえているとForm 1099というフォームをIRSに提出する必要があります。該当する支払があった場合、翌年1月末までに対象者およびIRSに提出する必要があります。漏れや誤りがあるとペナルティーの対象となります。Form1099を作成するにあたり、支払い先からW-9というフォームを入手されることをお勧めします。W-9フォームには氏名、事業形態(個人/法人)、住所、TIN(SSNまたはEIN)が書かれていますので、Form1099を作成しないといけないかを把握することができます(例えば支払先のW9を見ると会社はCコーポレーションであったためForm 1099を作成する必要はない、など。ただし例外あり)。 

 

  1. 移転価格文書

米国では、海外にある関連会社との取引において移転価格(Transfer Pricing)に関する文書の備え付けが求められています、IRSは外国にある関係会社取引が適正な取引で設定されているかを重視しており、通常税務調査時に文書提出を求められますまた、近年は日本の親会社が税務調査を受けた際に子会社の移転価格税制レポートを要求されることもあります。 

 

米国で事業を展開する日系子会社には、多層的かつ期限の厳格な税務コンプライアンス要件があります。法人税や州税などの基本的な申告義務に加えて、情報開示や移転価格など、事前準備や継続的な管理が求められる項目も少なくありません。 

CDHでは、米国で事業を展開する日系企業の税務申告・報告対応をはじめ、コンプライアンス体制の構築支援を行っております。申告・報告の時期や取引の整理に不安のある場合は、ぜひご相談ください 

 

 

 

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免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の法的・税務アドバイスを行うものではありません。具体的な対応については、必ず専門家へのご相談をお願いいたします。