財務諸表項目の中でも売上は損益計算所の一番上に記載されており、株主および銀行また財務諸表を必要とするステークホルダーは売上を非常に重要視します。よって会社は売上を増やそうと不正を行うことがあり、実際に過去に売上に関する不正は多く行われてきました。今回は売上の不正は具体的にどのようなものがあるかについてお話させていただきます。
代表的な売上の不正の例は下記のとなります。
売上架空計上
もっとも単純な経理不正は、売上の水増しです。売上の水増しとは、架空の請求書を偽造するなどして、実際には存在しない売上を計上することです。また、請求書を発行せずに手仕訳(Journal Entry)で売上を計上することもあります。
売上の除外
売上の水増しとは反対に、売上を除外するケースも存在します。例えば、請求書を発行して売上を計上したが、クレジットメモを発行して売上を除外する、レストランなどの現金売上の場合はわざと現金売上を帳簿に記帳しないこともあります。レストランの場合は主に税金を減らすことが目的です。
期ずれ売上
本来計上すべき会計年度ではなく、その前年度や翌年度に売上を計上する経理不正を「期ずれ」と言います。会計上、売上はいつか計上すればよいわけではなく、正しい期間に計上する必要があります。特に会計年度をまたいで売上の計上時期がずれるとその期の売上が大幅に変わってしまう可能性があります。
例えば、今年度の売上は予算売上を上回っているが、翌年は予算より下回るかもしれないと考えられる場合、今年に商品を出荷したとしても今年の売上ではなく、意図的に請求書の発行を翌月に遅らせて翌年度の売上にずらし、これによって翌年の売上をよく見せることができます。
循環取引
循環取引とは、複数社で共謀して架空の売り上げを計上する取引です。例えば
A社がB社に、商品Xを $1,000で販売する
B社がC社に、商品Xを$1,100で販売する
C社がA社に、商品Xを$1,200で販売する
その後、またA社がB社に$1,300で販売する
といった方法です。実際に商品は動いておらず、書面だけのやり取りであったり、商品は移動しているが、この3社間のみでの同じ商品が移動だけとなっているため、実際に商品を販売していることにはなりません。他社と共謀する必要があるのでグループ会社間で行われていることが多いようです。
二重売上
顧客に売った商品を買い戻す取引がある場合、商品を買い戻すことが確実であれば販売をしたとして売上に計上してはいけない、という会計ルールがあります。なぜなら、最初に商品を売った際に売上を計上し、その商品を買い戻し、そしてその商品を販売した際にまた売上が計上されることになり、売上が二重に計上されるためです。例えば、A社は材料をとある業者、B社に販売し、B者が材料を加工して完成品にし、A社がB社から完成品を買い戻し、この完成品を他の顧客C社に販売する取引があったとします。この場合、A社はB社に材料を渡した段階で売上を計上、そしてB社から完成品を買い戻してC社に完成品を販売した段階で売上を計上、つまり売上を二回計上することで売上を水増しすることができます。本来、A社はB社に材料を渡した段階では売上としては計上できず、A社は引き続き材料を在庫として記帳し、完成品と材料費の差異は加工賃として在庫に計上し、A社がC社に販売した際に初めて売上を計上する必要があります。
売上の不正が起こる理由
売上不正が起こる主な理由は、ノルマや目標や予算達成のプッシャー、株主への印象や銀行融資を受けるために決算を良く見せたいという心理からです。実際に過去、売上を粉飾したことで信用を失い、上場廃止や廃業に追い込まれた会社もあります。
弊事務所では売上のみならず、売上以外でも不正が発生しづらい統制づくりのサポート、また不正が発生したかもしれないので調査をしたいという不正調査サービスも行っております。ご質問等ございましたらCDH会計事務所の中尾 [email protected] までお気兼ねなくお問い合わせください