クロスボーダーライフをサポートする

 

ソーシャルセキュリティ制度は、他国の年金制度の例にもれず複雑です。米国人でもこのルールを良く理解することは至難の業です。

しかし、この制度は、米国に住むすべての人に該当する制度であり、この制度のキーポイントを知ることは、アメリカで長い間の生活をするときに、絶対に不可欠になります。この記事では、ソーシャルセキュリティ制度のキーポイントを整理して説明して、最後に具体例を加えることで、より読者のこの制度に対する理解を高めることを目的としています。

 

1.いくらもらえるのか?

ソーシャルセキュリティ制度のなかの老齢年金(Retirement Benefits)がこの制度のバックボーンです。後述しますが、ソーシャルセキュリティベネフィットは、老齢年金だけではありません。さて、老齢年金は62歳でもらい始める場合は、繰上げ受給になり、受給金額が減ります。フルリタイアメントエイジは、現在67歳まで段階的に引き上げている最中であり、その場合はリタイアメントベネフィットの全額を貰うことができます。逆に受給を遅らせることを繰下げと言い、70歳まで遅らせることができるわけです。

一番最初の表の金額は2020年度での最高のベネフィット金額です。つまりシーリングがあるというわけです。仕組みとしては現役時代の平均収入と支払い期間によって受給金額が変わります。この金額は毎年変化します。

 

2.どうしたら貰えるのか?

受給資格は4つのキーポイントがあります。最初は米国で働き、ソーシャルセキュリティ税を支払うことです。この税金は通常の従業員の立場で支払う場合は、ソーシャルセキュリティ税として雇用主と従業員が半々づつ拠出する仕組みです。これが自営業主(Independent Contractor)になると、Self-employment Taxとして一人で全額支払うことになります。

米国ではクレジット制度というものがあり、給料を2020年では$1,410稼ぐとひとつのクレジットを取得できます。一年間で取得できるクレジットの数は4です。そして40クレジットが貯まったら受給資格が生じます。もちろん前述の62歳に到達しないと老齢年金はもらえません。すなわち40クレジットは10年間にあたります。

追加すると現在は日米社会保障協定により日本で加入していた日本の年金の加入年数が加算できる制度があるので、最低で6クレジットあればソーシャルセキュリティベネフィットを受け取ることができます。こちらは日米社会保障協定に記載されています。

 

3.何がもらえるのか?

老齢年金だけでなく、その他5種類の年金をもらうことができます。

1.配偶者年金―配偶者であれば、年金をもらっているもうひとりの配偶者の50%まで同時に受け取ることができます。

2.子供年金―老齢年金を受け取るときに、一定の年齢以下の子供がいる場合はその子供たちも年金を子供年金として受け取ることができます。

3.遺族年金―10年間ソーシャルセキュリティ税を支払っていた人が亡くなった場合は、遺族は遺族年金を受け取る権利があります。故人の受給額の最高100%まで受給できます。

4.死亡一時金―故人と同居していた配偶者に2020年のレベルでは$255が支払われます。

5.障害年金―リタイアメントエイジ以前でも障害により働けなくなった人に支払われます。

 

4.ケーススタディ

50歳で子供の父親になり、66歳のときにソーシャルセキュリティベネフィットを申請したとします。子供はまだ子供年金の受給の資格があります。また配偶者も、配偶者がもし働いていなかったとしたら、本人の50%のベネフィットを受けることができます。つまりこのケースでは家族3人が別々の名前のベネフィットを同時に受けることができるわけです。子供がある年齢になると、子供年金は終了します。そしてこの方が70歳でお亡くなりになったとしたら、配偶者は、遺族年金を配偶者年金の代わりに受け取り始めることができます。そしてもちろん死亡一時金を受け取ることができるのです。

 

以上がソーシャルセキュリティのキーポイントです。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

おこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] YouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。