PPPとは企業が従業員の雇用を維持すれば給与支払いを肩代わりする制度で、2020年3月に成立した2兆ドル規模の経済対策に盛り込まれたプログラムの一つです。このPPPは形式上はローンになるのですが、雇用維持の目的に沿った一定の条件を満たせば2.5ヶ月分の運転資金の返済が免除され、実質的に給付に近い制度です。よって借り手企業が当該融資の会計処理に際してどのように扱うべきか疑問が生じるかと思います。今回はPPPローンの会計処理について述べたいと思います。

 

■PPPローンの特徴

PPPによる融資の法的な位置付けは負債であるのに対し、当該融資は免除可能であるという点から実質的には政府補助金であるという見方も可能です。米国証券取引委員会(SEC)は見解として、このPPPによる融資について米国会計基準のASC470「負債」に基づき負債計上することあるいは国際会計基準のIAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」の特定の条件事項に従って会計処理することに異論はないと公表しています。ではこの二つのルールに基づいた会計処理はどのように異なるのでしょうか?

 

米国会計基準 ASC 470

借り手企業は通常の借入金処理と同様、PPPプログラムにて得た融資を負債として借入金として認識し、支払利息を未払計上します。借入金を減らし、債務免除益として計上するためには借入金の一部又は全部が免除され、債務者が法的義務から解放されることが明白になる必要があります。よって債務免除の申請が許可されない限り借入金として処理しておくことが必要になります。

 

■国際会計基準 IAS第20

借り手企業が、PPPによる融資を受領する要件を満たし、当該融資が実質的に政府補助金であると考えられる場合は、IAS20第20号に従って会計処理を行うことも可能です。IAS第20号における政府補助金に関する会計処理では①補助金の受領に必要な全ての条件を満たす、且つ②補助金を受領することができる合理的な保証が存在することが確認できた時点で補助金として認識することができるとされています。ここで合理的な保証が得られた場合、補助金として収益の認識が可能となりますが、認識の期間は補助金が交付される目的とされる事象(及びそれに関連する費用)に対応する期間において均等に認識される必要があります。例えば補助金が今後3年間にわたって使われるようであれば3年間で収益として認識します。そのため、補助金によるキャッシュフローの未認識部分は繰延収益として負債計上されます。その後、期間経過とともに負債を減額し、収益を認識する際は、①その他収益、又は②関連する費用(人件費等)の減額、として計上されます。

 

PPPローンの会計上の取り扱いについて質問がございましたらCDH会計事務所の中尾 [email protected] までご連絡ください。