海外赴任者の税負担を公平に調整する「Tax Equalization(タックス・イコライゼーション)」制度は、駐在員と企業双方にとって重要な仕組みです。近年では、米国に駐在中に現地の証券口座を開設し、株式や投資信託などに投資するケースが増えてきています。その結果、給与以外にも利子・配当・譲渡益といった投資所得が発生し、米国での税金を負担している企業側でも、その取り扱いに迷われることがあるかもしれません。今回は、赴任中に発生する「投資所得(利子・配当・譲渡益等)」がこの制度の中でどのように扱われるのかについてご紹介いたします。

■ Tax Equalizationにおける投資所得の取り扱いは?

Tax Equalizationの基本的な考え方は、「駐在に伴って発生する追加的な税負担を企業が補填し、駐在員の税負担が日本勤務時と同水準になるよう調整する」ことにあります。

このため、投資所得のように個人の判断で得られる所得については、税金は個人負担となるのが一般的です。たとえば、配当収入や株式売却益、不動産所得などがこれに該当します。

■ 実務上の精算方法

米国での所得税申告書(Form 1040)には、投資所得も含まれますが、Tax Equalization制度を使用しての精算時には、給与所得に対応する税額のみが会社負担となり、投資所得に対応する税金はご本人の自己負担となります。会社が全ての税金を仮払いしている場合、差額分を会社が駐在員から回収することになります。

■ 配偶者や家族の投資所得にも注意

米国では、夫婦合算での申告(Joint Return)が一般的であるため、配偶者名義の投資収益も所得税申告書に含まれます。この場合も、基本的には全ての投資所得に対する税金は、駐在員個人負担となります。

■ 例外的な対応がされる場合

企業によっては、以下のような場合に限り、投資所得の一部または全額に対する税金を会社が負担するケースもあります。

  • 会社支給の株式報酬に関連する課税
  • 駐在に起因して課税タイミングや税率が大きく変化し、実質的に不利益が生じた場合
  • 日本の自宅を駐在期間中のみ貸し出す場合

こうした特別対応の有無は、企業ごとのTax Equalizationポリシーによって異なります。例えば、社内ルールにより、精算額に上限・下限の設定を設けている場合もあります(例:±100ドル未満は精算不要)。

■ 最後に

投資所得の取り扱いは、Tax Equalization制度の中でも見落とされがちなポイントです。駐在員の方への十分な説明と、精算書における明確な区分が、後の誤解やトラブルを防ぐ鍵となります。今後、海外赴任に関わる税務対応を見直す際は、投資所得の扱いについても一度社内ルールを確認してみてはいかがでしょうか。

記事に関するご質問は、柴原 舞([email protected])まで。CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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