近年多くの会計事務所がAIを使った財務諸表監査を開始しています。前回はAI技術による不正会計分析方法をお伝えしましたが、今回は会計データをソフトに取り込めば異常や不正と考えられる取引をソフトが特定するAI監査についてお話いたします。

AIソフトにより特定されるリスク

AIソフトでリスクを特定するためには全ての勘定科目の総勘定元帳をエクセルにダウンロードしAIソフトに取り込みます。その後AIソフトは仕訳内容と数字から不正や間違っているリスクが高い仕訳を特定し、特定されたリスクの内容を要約して表示します。下記が特定されるリスクの例となります。

  • AIソフトでは実際に監査を行ったことがある監査人が特定したリスクが高い取引(一般的なリスク)が組み込まれており、このリスクに当てはまる取引
  • 仕訳の摘要欄にヘッジやデリバティブ等複雑な会計取引を示している用語が入っている取引
  • 期末近くの数日に記帳されている大きな金額の取引
  • 手入力で行われたであろう仕訳
  • 戻し“Reversal”といった不正を示しているかもしれない用語が入った取引(架空売り上げの戻し等が入っている可能性があるため)
  • 取引番号が連番になっていない取引
  • 値が00や9.99等で終わっている数字の取引数が多い場合
  • かなり大きな金額の仕訳
  • 定期的に記帳されていない、一回きりの取引(配当支払いなど)

要約されたリスクにはスコアーがつけられており、リスクの高さが%で表示されます。よって%が高いほど不正や間違いのリスクが高いとされます。要約されたリスクの画面の各リスクをクリックすると特定されたリスクが入っている仕訳が特定できます。

また、過年度の総勘定元帳を取り込めば前年度との比較も可能となります。よって前年度に比べてリスクが高い取引が多いかどうか等を検討することができます。

月次分析

全ての勘定科目の総勘定元帳をAIソフトに取り込むため、月次の財務諸表分析も可能になり、期中での異常と考えられる取引を特定することができます。

例えば貸倒損失の売掛金に対する割合、売掛金や買掛金の回転率銀行預金の売上に対する割合、流動比率、売上総利益率、一般管理費が売上に占める比率、返品が売上に占める比率等を月次ベースでグラフで見ることができ、また過年度との比較も可能です。グラフで見ることによって月次レベルでの変動がすぐにわかり、かつAIソフトはどの月に不正や間違えているリスクがあるかを特定することができます。例えば返品が売上に占める比率が前年度より高くなっている場合、商品の品質に問題が発生し返品が増えているのかもしれません。その場合、今年に販売した商品のうち返品が予想される場合は今年の売上を減らす必要がありますので、返品見積りが正しく行われているかを監査人は確認する必要があります。また、売上総利益率が極端に高くなっている月は売上が増えたように見せるために売上だけを計上して原価を計上しないように不正を行っているかもしれません。

過去はエクセルを駆使してフィルターや並び替え機能を使って手で異常と考えられる取引を特定しており、作業に時間がかかっておりましたがAIソフト使用することで手作業では発見できなかったかもしれない不正や間違いを見つけることができ、かつ監査作業の効率化、迅速化を図ることができ、監査を受ける側も行う側にも両方ともにメリットがあります。

弊事務所では財務諸表監査、またAiを用いての財務諸表分析及び不正調査サービスを行っております。これらサービスについて質問等ございましたらCDH会計事務所の中尾 [email protected] までお気兼ねなくお問い合わせください。