何年も放置したままの銀行口座はありませんか?たとえば、子供の頃に親が作った口座、いっときの給与振込のために作った口座、アメリカに来て以来そのままになっている口座など。アメリカには、日本の金融口座を報告するための税務申告、FBAR (Report of Foreign Bank and Financial Accounts)があります。このFBAR申告に関し、「休眠口座も申告するのですか?」という質問を受けることがあります。そんなときには、「お持ちの口座は実際に休眠口座になっていますか?」とまず確認します。休眠口座の対象となるか否かは規定により決まっていますので、何年放置されても対象外となる口座もあります。対象になったとしても、預金は、銀行から別の場所へ移管されはしますが没収されることはなく、所定の手続きでその間についていた利子も取り戻すことが出来ます。ただ、手続きは本人確認のため銀行窓口にて行われますので、アメリカから一時帰国をするとなると負担になるかもしれません。

休眠預金とは?

前述の通り、休眠口座あるいは休眠預金は、ある基準により認定されます。休眠預金とは、10年間、取引のない休眠口座に預金されているお金を指します。具体的には、2009年1月1日以降に取引した預貯金で、かつ、それ以降のある時点から10年以上取引のない状態で口座に放置されているお金です。

従って、2019年1月時点ですでに10年より長い間(例えば15年や20年)取引がない預金は、最後の取引が2009年1月より前になるので休眠預金にはならず、本制度の対象外です。2009年1月1日が基準になることがポイントです。

自分のお金は没収されてしまうのか?

休眠口座になってもお金は没収されません。ずっと塩漬けになっている預金は、自分の金融機関から「預金保険機構」へ移されて社会貢献のために活用されるのです。

移されたお金は、民間団体を通して子ども若者支援、生活困難者支援、地域活性化支援の3分野に使われます。金融庁に資料によると、毎年1,200億円の休眠預金が発生しているとのこと。うち、500億円は後で払い戻し(取り戻し)されているので、残りの700億円が放置されている金額。この有効活用のために2018年1月に「休眠預金等活用法(正式名称「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」)が施行されました。現在、この法律の枠組みで休眠預金が活用されているのです。

休眠預金にならないようにするには?

休眠預金となってしまった自分のお金は、取り戻すことが出来ます。休眠預金になる前にも、金融機関はその旨を通知してくれます。ただ、預金残高が1万円未満だと通知は送付されず、残高が1万円以上でも登録住所やEmailアドレスが古いままだと通知は届きません。

休眠預金にならないようにするためには、1万円以上の預金、常に最新のコンタクト先情報へアップデートしておく、そして、「今後も預貯金などを利用する意思を表示した」と認められるような「取引」をしておくことが求められます。たとえば、「現金の出し入れ」は全銀行において取引と認められていますが、「通帳記帳」や「ATMでの残高照会」が取引と認められるかは銀行により異なります。また、銀行による利子の支払いは原則として取引に該当しません。

対象となる「取引」・全金融機関共通:入出金(金融機関による利子の支払いを除く)、手形または小切手の提示等による第三者からの支払請求(金融機関が把握できる場合に限る)公告された預金等に対する情報提供の求め

対象となる「取引」・金融機関によるもの:通帳や証書の発行・記帳・繰越、残高照会、契約内容・顧客情報の変更、口座を借入金返済に利用する旨の申出、預金などに係る情報の受領、他の預金等の取引

対象となる「銀行」の種類:銀行(外国銀行は対象外)、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、商工組合中央金庫、農業協同組合、漁業協同組合、水産加工工業協同組合、農林中央金庫

対象となる「預金」の種類:預金保険法、貯金保険法の規定により、預金保険、貯金保険の対象となる預貯金です。具体的には、普通・通常預貯金、定期預貯金、当座預貯金、別段預貯金、貯蓄預貯金、定期積金、相互掛金、金銭信託(元本補填のもの)、金融債(保護預かりのもの)

対象とならない「預金」の種類:特定の目的のための預貯金や、障がい者のためのマル優の運用となっている預貯金、外貨預金などの預金保険制度の対象とならない預金は対象外です。具体的にには:外貨預貯金、譲渡性預貯金、金融債(保護預かり無し)、2007年10月1日(郵政民営化)より前に郵便局に預けられた定期郵便貯金、財形貯蓄、仕組預貯金、マル優口座があります。

休眠預金を取り戻すには?

窓口へ出向かなければなりませんが、休眠預金として移管された後も、今までの取引銀行で無期限で引き出すことができます。その際には、通帳やキャッシュカード、本人確認書類(身分証明書)を持参します。通帳やカードを紛失してしまっている場合にも、身分証明書を提示すれば引き出し可能です。合併などで元の金融機関が消滅している場合には、元の銀行を引き継いだ現在の金融機関で手続きを行います。

本人確認書類手続きの内容は金融機関毎に異なるので、直接お問い合わせください。引き出す際に現金での受け取りになるのか元の口座を引き続き使えるのかについても、金融機関毎に異なるようです。

また、相続時に相続財産が休眠預金であることが分かった場合にも、所定の手続きを経て相続人が引き出すことが出来ますので、金融機関に問い合わせてアドバイスをうけてください。

まとめ

アメリカの税務申告という観点からいうと、まずは休眠口座にしないことです。休眠口座も基本的に毎年のFBARの報告に含めますし、FBAR申告のために必要な最高残高や利息額の確認は毎年恒例になるはずです。ただ、前述の通り、銀行による利子の支払いは取引として認められていませんし、残高照会が取引と認められるかは銀行毎でことなりますので、単に口座保有をしているだけでは休眠預金になってしまう可能性があります。よってい、一番確実なのは、出入金をすることです。10年に一度行えばよいのです。もし今までFBARの申告をしたことがない場合、急いで情報集めをしなくてはなりませんが、そのような時に自身の口座が休眠口座になっていたことがわかると、さらに面倒さが増します。せっかく正しく申告をしようとしているのに情報がすぐに入手できないというフラストレーションをなくすためにも、保有口座の定期的な残高チェックを心掛けてください。

参考文献

放置したままの口座はありませんか?10年たつと「休眠口座」に。

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201907/1.html

休眠預金等活用法Q&A

https://www.fsa.go.jp/policy/kyuminyokin/kyuminyokinQA.pdf

長い間、お取引のない預金等はありませんか?https://www.fsa.go.jp/policy/kyuminyokin/kyuminyokin.html

長期間使用していない預金等のお取扱いについてhttps://www.bk.mufg.jp/ippan/law/kyuuminyokin.html

休眠預金等活用法に係るお取り扱いについてhttps://www.jp-bank.japanpost.jp/kaisetu/basicinfo/kat_bi_kyuminyokin.html

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