米国永住権が日本での銀行口座開設時に直面する

問題点と準備

 

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大多数の人が日本に帰国されて、最初に行うのが、銀行口座の開設です。そして永住権の放棄を行います。ここで、問題になりつつあるのが、まだ永住権を保持している人が口座開設時に直面する困難です。
1,困難
困難とは、銀行口座の開設に大変時間がかかる、例えば4ヶ月などの期間がかかる。普通の日本の居住者であれば、オンラインで2時間もあれば開設できるのにも関わらずです。また開設時に様々な書類の提出を求められるなどです。果ては根ほり葉ほり、ご自身の状況の聞き取りがされるなどです。日本の住民票もマイナンバーも取得しているのに、なぜなのでしょうか? 今回はこの点について順序立てて説明しましょう。
2,理由
米国の永住権を維持している人は、米国税務上ではまだ米国の居住者です。つまり物理的にあなたがアメリカに住んでいようが、日本に住んでいようが、税務上では米国の居住者であるわけです。これを英語で US Residentと申します。
米国の居住者である場合は、FATCA(外国口座コンプライアンス法)という米国政府が成立させた米国法に基づいて、日本の金融機関は、米国の内国歳入庁つまりIRSに情報を開示しないといけません。なぜ日本の銀行が米国の法律によって規制を受けるのかですが、それは日本の銀行も米国市場でビジネスを行っているからだと思います。米国でビジネスをしたいのであれば、これらの情報を開示しなさいというのがFATCAの効力の源であると私は理解しています。
さて、ある日本の銀行のウェッブサイトなどを見ますと[i] 「米国人等」という記載があり、これらの人は、米国税務当局への報告対象になるお客様と書かれています。具体的には、米国市民、グリーンカード保有者、そして米国にビザで居住している方が含まれます。
前述のFATCAでは、これらの「米国人等」は、名前、口座番号、納税者番号、口座残高、利息等を定期的にIRSに報告することが金融機関に求められています。金融機関は顧客から情報開示に関する同意書を提出してもらい、IRSに報告します。
別の金融機関のウェッブサイトを見ますと、「住所と居住地国が異なる場合の事情の詳細等」を求められると書かれてあり、金融機関独自のW-9フォーム(宣誓兼同意書と訳されています)を求められています。[ii]
私が検索した金融機関は著名な機関ですが、地方の金融機関も同様にFATCAの報告義務はあります。したがって金融機関により独自の情報を求められることが予想されます。
3,対策
考え方を変えるのと、永住権を放棄してしまえば、これらの困難も困難でなくなります。
日本の金融機関も好きで多くの情報や書類を集めようとしているわけではありません。あくまでFATCAに遵法するため、そして自社に万が一かかってくる罰金などを避けるために、せざるを得ない行為であると理解すべきです。
これらの行為を行うことで、金融機関に大変なコストと手間がかかっていることも理解すべきです。顧客の資金から出てくるスプレッドというわずかな利益で、金融機関は利益をねん出しています。そんな薄い利益構造のなかで、FATCA対応でのコストがいかに大変なのかがわかると思います。
逆に口座を開設する側としては、このロジックを理解していれば、金融機関からの様々な要求の理由がわかり、冷静に対応できます。もちろんすべての情報を正確に開示することは言うまでもありません。
時間と手間がかかることをあらかじめ予想されることで自身のフラストレーションをコントロールできます。
おそらく永住権の放棄がI-407の提出により終了してあれば、これらの困難はなくなるはずです。それは読者が「米国人等」のカテゴリーから外れるからです。つまり米国居住者ではなくなり、FATCA対応が必要ではなくなるからです。

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[i] https://www.bk.mufg.jp/ippan/law/fatca.html

[ii] https://www.mizuhobank.co.jp/retail/tetsuduki/todokedesho/index.html