藤本 光

 

永住権者マニュアル

今回は二回に分けて、読者が知らないといけないエステートプランニングについてわかりやすく説明したいと思います。

1、まずは「エステートプランニングとは何か?」です。

万が一の場合に備えて生存中あるいは死後の財産の管理や分配について、事前に計画しておくことです。その計画は以下の書類に記載されます。

  • Trust Agreement (信託契約)
  • Will (遺書)
  • Financial & Property Power of Attorney (金融及び財産委任状)
  • Health Power of Attorney (健康委任状)

(注:州によって上記と違った書類になるケースがあります。)

2、エステートプランニングがない場合の起きる可能性がある不手際も理解しましょう。

  • 財産がProbateといわれる州の裁判所の手続きを経ないと分配できない
  • Probateのプロセスが長く、必ずしも遺族の意思に沿わないで財産の分配が起きてしまう可能性があります
  • 赴任期間中に心臓発作で急死した駐在員の夫の名義の銀行口座や家の所有権が遺族にスムーズに移らない
  • 日本に家族で帰国したが、米国にまだ財産を残している。日本に帰国してからしばらくして財産所有者(夫や妻)が亡くなったが、上記の手配をしていなかったために元所有者名義の財産を日本にいる遺族が自由にできない
  • 病気になって自分で医療処置の判断ができなくなったときに、自分の意図と違う処置がされてしまう

3、エステートプランニングの基礎知識を理解しましょう。言葉を覚えるだけでも大変です。

  • Trust (信託)-自分の持っている資産をトラスト(信託)に所有権を移してしまうことです。つまりご自身の所有の資産の名義をトラストに移してしまうのです。TrustはTrustee(管財人)を設定します。

さてTrustには税務申告が必要になる場合があります。これをTrust Returnといいます。Trustがある一定の所得レベルを超えたり、受取人が非居住者の場合などに税務申告(Form 1041)が必要になります。

また銀行など第三者をTrusteeに任命した場合はTrusteeへの費用がかかります。

  • Will-死後の資産分配などを記載した法的文書のことです。未成年の子供がいる場合にその後見人も定めます。経費、負債、税金の支払いについて明記します。通常遺書は二名の証人が必要です(注:州により違いがある可能性があります。)
  • Power of Attorneyー委任状で代理人に医療行為に関する決定や、財政上の決定をしてもらうことができるようにする書類です。医療の場合は一時的に決定能力がないと判断されたときに有効になります。

最後に覚えておいていただきたいことは、エステートプランニングはこの分野の専門の弁護士が行う作業です。会計士の仕事の範囲ではありません。 エステートプランニングを作成する場合は、必ず信頼できる弁護士に依頼してください。

次回はエステートプランニングと日米の遺産税について説明したいと思います。

CDHでは米国永住者の方の税務申告作成のサービスを行う傍ら、永住者のさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。なぜなら永住権者は、日米の経済そして、国際交流を支えるまさに「縁の下の力持ち」だからです。また永住権者が抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、投資、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。私もF-1ビザからアメリカ在住すでに33年になりました。「ぜひ永住者の役に立ちたい」と思っております。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションをおこされる場合は、必ず税務・法務などの専門家と個別の相談をしてから行ってください。

永住権者あるいは新一世として税金に関してご質問がある方は初回無料でご相談にのります。お気軽に藤本光までご連絡くださいませ。[email protected] (630) 253-0215

すべてのご質問にお答えするように最大限の努力を払っております。