得する永住権者の税務知識

グリーンカードを持つことは、ビザを気にしないで、アメリカで自由に仕事を選べることを意味します。筆者も30年くらいまえにグリーンカードを取得したときの喜びを今でも覚えています。私の場合は仕事を自由に選べるのと、家内も働けるようになったことと両方の喜びでした。

これから永住権を取得しようという人に日米の税務の観点からいくつかのアドバイスがあるのでぜひ覚えておいてください。

米国税制の完全な管理下に入る

当然なのですが、米国の居住者は全世界の資産と全世界で生ずる収入を報告義務があります。ビザ保持者の場合は、ビザが切れればこの義務は自動的になくなりますが、永住者は永住権を税務上の手続きを経て放棄しない限り、この義務はずっと残ります。

贈与・遺産税のメリットを享受できる

米国のシステムは財産を受け取る側ではなく、財産をあげる人に納税義務があります。さらに税金の控除額が日本の約36倍と、人口の1%も贈与税も遺産税も支払わない国なのです。もちろん税制が将来変わる可能性はあるのですが、いったん築いた資産は世代を超えて継承しやすい国と言えそうです。

非常に厳しい永住権放棄時の税制

放棄自体は手続きを踏めばできますが、一定の富があり、所得が多い人はCovered Expatriate (「該当国外退去者」とも訳せます)になります。ルールを簡略化して説明しますと、全世界に純資産が200万ドル以上ある人、そして過去5年間で連邦所得税を平均で$168,000以上支払った人です。この$168,000は毎年物価でスライドしていきます。

この範疇に入った永住者が永住権を放棄を試みると、特殊な税金がかかります。アメリカ政府はこの範疇の人たちに重い足かせを掛けるような税金です。

  • 放棄時の総資産の市場価値と所得価格(コスト)の差額をみなしのキャピタルゲインとして課税します。
  • 401(k) , 403(b), 457(b), 408(k), 408(p)などの適格年金やAnnuityなどの受領時に30%の源泉税を課します。外国から受ける同様の年金も含まれます。この30%は非居住者としての申告をしても返還されません。
  • IRA(Individual Retirement Account(IRA), Health Saving Account (HSA), Section 529などの口座は永住権放棄時に一度に換金したことを仮定して、その年の所得に全額含めないといけません。ただし10%のEarly Payment Penaltyなどは適用されません。

200万ドルに含める資産項目が広範囲

現金口座、証券などの投資口座、日本の預貯金、所有している不動産などの一般的に考えられる資産項目以外に、日本の企業年金、生命保険のCash Value、IRAの残高、401(k)の残高などが含まれます。含まれないものとしては米国のソーシャルセキュリティ、日本の厚生年金などの残高がわからないものです。

このように永住権を得るということは、仕事の選択の自由が得られるだけでなく、いくつかの重大な影響をあなたの生活に与えることを理解いただけたでしょうか?

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

なおこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] (630) 253-0215