日米間では相続税及び贈与税に関する協定がありますが、基本的に米国市民と米国本籍者は全世界の相続財産が米国遺産税の対象となります。同様に日本国籍の方は米国のグリーンカードを保持され、米国居住であっても相続財産は日本の民法により処理されます。そしてその相続財産は所在地(国)でも課税対象となります。従って米国居住の日本国籍の方は遺言書がないと死後の相続が大変複雑になり、相続の処理にも時間が掛かることになります。
今回はそんな日本の遺言書制度について簡単に説明します。
遺言制度
現在の遺言制度は公正証書、秘密証書、自筆証書の三種類があります。
1.公正証書遺言
- 公証人が法律の定めに従って作成し原本は公証役場で保管されるため安全
- 証人が2名必要であるが相続開始後の家庭裁判所による検認の必要はなし
2.秘密証書遺言
- 遺言者が遺言を作成し自筆で署名捺印し、封筒に入れ同じ印鑑を使って封印する
- この封筒を公証人と証人2人の前に提出して公証人の認証を得る
- 署名以外はパソコン使用可能であるが相続開始後の家庭裁判所による検認の必要あり
3.自筆証書遺言
- 全文が本人手書きの遺言書で、費用も掛からないが相続開始後に家庭裁判所による検認の必要あり
2019年に日本の相続・贈与に関する民法が大きく変わり、この自筆証書遺言の様式が大幅に緩和されました。
従来
- 従来;遺言全文、署名、日付、目録などすべてが手書きの上、捺印
- 家庭裁判所の検認手続きが必要
2019年1月13日より
- 本文を手書きすれば遺産目録部分に限りパソコン等での作成が認められる
- この目録として登記事項証明書や預金通帳のコピーも使用可能
- 家庭裁判所の検認手続きが必要
2020年7月10日より
- 遺言書保管法という自筆証書遺言の法務局保管制度が開始
- 本人が法務局に出向き遺言書の形式確認と本人確認の上、原本とともにデータ化して保管
- 公正証書遺言より費用は安く、確実性では公正証書に劣らず、紛失の恐れがない
- 家庭裁判所の検認手続きは不要
この記事はあくまでも読者の方が理解しやすいように纏めたものです。詳しくは日本及び米国の相続税に関する専門家の方にご相談ください。
武藤 登