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こちらの表は、財務省の「所得税など(個人所得課税)に関する資料」というページに出ているひとつのチャートです。[i] 州税や、地方税まで考慮した、全体像として所得税を国際比較をしようと財務省が試みている大胆なチャートだと思います。このページ自体も多数の資料が出ている大変興味深いです。興味がある人はさらに研究してみてください。

今回は、このなかからひとつのチャートを選んでコメントをしてみたいと思います。YouTubeにも日米の税金負担比較のトピックでひとつのビデオを載せましたが、改めてこのチャートを見てみましょう。気づく点は、日米で、1000万円までの所得レベルまでは、日米は非常に税率の点で似ているという点です。英国、ドイツ、フランスと日米は大きく違って、低レベルで所得税率が推移します。しかし、所得レベルが2000万円、3000万円となりますと、日本は欧州のレベルに仲間入りして、逆に米国は、ぐっと低率で推移するのがわかります。

もし読者の方が日本で将来生活しようと考えられるのでしたら、この1000万円までの税率は大変興味深いところです。なぜなら日本の医療レベルや、介護・医療保険の充実度に関しては、アメリカを凌駕すると考える人が多いからです。毎年物価インデックスで上昇するソーシャルセキュリティのベネフィットと401(k) からの米国からの引き出しで、日本で生活しようとされる人は多いはず。そう考えると、税率が比較的安い、日本での生活も悪くはないと考えられるかもしれません。

さらに日本の物価は他国に比べて大変に安い事実があります。“「安いニッポン‐価格が示す停滞”という日本経済新聞出版の本では、例としてディズニーランドの大人一日券の国際比較が紹介されています。[ii] これによると、このチケット、東京では8200円なのがオーランドでは14500円だそうです。それ以外のディズニーランドでも東京より低価格な都市はありません。東京が一番割安なわけです。この例だけでなく、日本の物価は総じて他国と比較して、非常に低い水準にあると言えます。

そこで、所得税が1000万円までのレベルでは諸外国に比べて高くなく、物価も安いとなれば日本はとても魅力的に見えますね。

筆者としては、読者に注意を喚起する意味で、ここで、いくつかのポイントをさらに考慮してもらいたいと思います。

  1. 州税のレベル
    この財務省の資料は、NY州を米国の例として計算をしています。しかし州税の税率は各州で違いますし、低い州は、州税が0%という州も7,8州米国にはあります。日本の州税にあたる住民税はどこに住んでいても10%一律です。それに対比して、テキサス、フロリダ、ネバダ、ワイオミングなどに住み、州税を支払わない選択肢もあるわけです。
  2. 日本の少子高齢化
    日本の働き盛りの人口は急激に減少しているというデータは引用する必要がないほど常識となりつつあります[iii]。将来の税収が減れば、社会保障や社会保険の財政に影響を与えるのは明白です。長い目で見たときに、日本の現在の個人への負担率や、健康保険、介護保険のレベルが日本が維持できるのかと考えると、不安にかられます。

誰もがクリスタルボールを持っているわけではないのですが、現在あるデータを読み込んで、長い目で考えたトレンドを意識することも大切だと思います。ぜひ読者の皆様はよく考えて行動されてください。そのアクションのなかには、税務シミュレーションもしないといけないかもしれません。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

なおYouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。また無料相談も行っています。こちらのリンクからご予約ください。メールでのご質問は、面会させていただいてお答えしております。https://outlook.office365.com/owa/calendar/[email protected]/bookings/

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[i] https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/itn_comparison/j02.htm

[ii] “「安い日本」価格が示す停滞” 中藤玲著、日本経済新聞社

[iii] https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_3.html