日本の国民年金を受給すると自らのソーシャルセキュリティ(以下“SS”)のベネフィットが減額されるのに、同じようなタイプの外国の年金受給者は、SSベネフィットが減額されないのをどう感じられますか?

Windfall Elimination Provision (WEP)と呼ばれる制度がソーシャルセキュリティにあります。「棚ぼた規定」と呼ばれます。日本で厚生年金、国民年金を受給しているとその年金額の最高50%までSS額が減額される制度です。SSは所得が低い人ほどSSの給付金が優遇される仕組みになっているのです。つまり所得が低い人ほど、高い年金支給率が適用されているのです。ですからSS対象外の所得を得ていたと分かった場合にSSのベネフィットが減額されます。これがWEPです。

SS受給のためにSSオフィスに行くと、「あなたは外国からの年金を受給していますか?」と聞かれます。そして厚生年金なり国民年金なりを受給している人は、「受給している」と答えるとその証拠を求められます。そしてその証拠を提出するとSSのベネフィットが減額されます。

さて国民年金とは「基礎年金」とも呼ばれるものであり、20歳以上60歳未満の国民全員が必ず加入することになっている年金です。国民年金の保険料は定額であり、令和元年度は月額16,410円となっています。国民年金の支給額は加入期間に応じて決まります。厚生年金とはこの国民年金に上乗せされて給付されて支給される年金なのです。

このWEP規定に基づくと所得の金額に関係なしで拠出された日本の国民年金は対象外のはずです。それは厚生年金は勤労に基づき所得金額により年金拠出額が変わるのに対して、国民年金は所得(勤労)に関係なく居住に基づくため、一定額の拠出だからです。

これを改善するためには、日本の政府が米国政府に国民年金の性格を説明して、国民年金をWEPから除外の申し入れが必要です。このアクションのために日本の大使館に嘆願したり、書記官に面談される人がおります。この運動の中心が海外年金センターの市川俊治さんです。

以下、市川さんから送ってもらった資料から抜粋してポイントを整理したいと思います。まずはSSの規定からです。

GN 00307.290 Evidence of Foreign Pensions and the Windfall Elimination Provision (WEP) の6番目に”two-tiered” social security systems について説明があります。これは国の年金が所得によって決まる制度と居住で決まる制度と二つが同時に存在する国について言及しております。まさに厚生年金と国民年金を有する日本はこのTwo-Tierシステムを持つ国なのです。このセクションでカナダの例を挙げて居住地ベースのOASというカナダの年金制度はWEPの対象外であると明確に述べているのです。

対象外になっている国とその年金の名前は以下の通りです。(ソースはGN 01701.320 Types of Pensions in Totalization Agreement Countries That Will Not Trigger the Windfall Elimination Provision (WEP))

つまりこれらの国は米国政府にこの年金の性質を説明して、WEPの対象から外してもらっているのです。

だいたい国民年金というのは、米国に長く住んでいる日本人からすると、多くは外国に飛び出してしまった息子や娘のために、心配する父親や母親が自分のお金から出し続けてくれたものが多いと思います。なけなしの小遣いをはたいて、心配する子供のために国民年金を拠出し続けたお父さん、お母さんの優しい心が痛いほど伝わってきます。

WEPの詳しい説明は、「海外年金センター」を主宰する市川さんのウェブサイトhttp://nenkinichikawa.orgを参照してください。また運動に同意できる方はぜひウエブサイトを通じて嘆願書を大使館に送るお願いを加えて頂ければと存じます。

さらにこの運動に協力していただける方は、[email protected] が市川さんの連絡先です。ご連絡差し上げてください。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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