得する永住権者の税務知識

     I. セクション529の概略

これは教育資金のための税制優遇口座です。529は連邦税の条項です。529は各州が独自に運営しており、イリノイ州のセクション529はBright Light Directionsと呼ばれています。

IRAのようにセクション529の口座を開設し、本人は口座のオーナーになり、教育費を費やさないといけない子供などを受取人(Beneficiary)に指定します。この口座への拠出ですが、当然、税引き後の資金になり、この税引き後の資金が所得税がかからないで増加していきます。そして、教育のために支出される際には所得税は無税でDistributionを受けることができます。教育資金用のRoth IRAのようなものです。

教育資金の内訳はいままでは大学の授業料、教科書代、ドミトリー、食費、勉強のための機材(コンピューターなど)でしたが、範囲が今では拡大されて、大学以外の教育費にも使えるようになっています。

イリノイ州などでは、529に拠出することで州の所得税が減税になる場合もあります。夫婦で$20,000まで拠出でき、その5%の$1,000を自身の所得から減額できます。つまりイリノイ州の個人所得税で損金が取れるのです。

このように大変優遇されたプランがセクション529です。

     II. Covered Expatriateと判定された場合のセクション529の取り扱い

まずこの口座はIRAなどと同じくSpecified Tax Deferred Accounts(特定繰延税金口座)になります。その場合は、あなたはI-407の受領日から30日以内にW-8CEというフォームをセクション529を保持している金融機関に送付しないといけません。

Form -W8CEを受け取った金融機関は放棄日の1日前にセクション529の金額を全額引き落とされたとしてフォーム1042-Sを作成します。納税者はこの結果セクション529の今まで無税で増え続けた投資利益に対してグリーンカードを放棄する年の税務申告(1040NR-Dual Status 申告)で一度に税金を支払うことになります。

この場合は、教育費以外に拠出した場合の10%のペナルティは課されませんが、Dual Status申告は独身で申告するときの税率になりますので、大変不利になるわけです。

グリーンカードを維持していた日までがあなたは米国の居住者であり、放棄した日から年末までは非居住者になります。したがって通常の1040ではなく、1040NRというフォームで居住者と非居住者の期間をリポートします。これをDual Status Returnと言います。

後日実際にこの口座からDistributionを受ける場合は、すでに全額所得税を支払っているのでアメリカの所得税はかかりません。

このように当初の減税制度を利用とした目的の行為がグリーンカードを放棄することによって全く逆効果の税金のインパクトの後で、セクション529の投資が落ち着くことになります。

このように、セクション529は、税金が優遇されている分だけ、Covered Expatriateには不利になるように税制が組まれているのがわかります。グリーンカードの放棄を考えている方には大変重要なポイントになるわけです。

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この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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