Source: https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/fw4.pdf

米国で働くとき、給与から一定の税金が自動的に引き落とされます。このシステムは「Withholding Tax(源泉徴収税)」と呼ばれ、給与所得者が所得税を納める主要な方法です。その源泉徴収税の額は「W-4フォーム」によって決定されます。この全体のメカニズムは具体的にはどのように働いているのでしょうか。そして日本の制度とはどのように異なるのでしょうか。

課税所得とは?

「課税所得」は、税法に戻づいて計算される、税金を納める必要のある所得を指します。これは、給与やボーナス、利子や配当、自営業の利益など、さまざまな収入源から得られるお金の合計から、政府が認める一定の控除を引いた後の金額です。控除には、事業経費、個人控除、標準控除、寄付、医療費などが含まれます。これらの項目を引いた後の金額が、税金を計算するための基準となる「課税所得」です。これは米国も日本も共通ですが、控除の具体的な内容は国により異なります。

日本と米国では課税所得の計算方法や課税の仕組みが異なります。以下にその主な違いをいくつか示します。

1.課税の単位:米国では一般的に家族単位で課税が行われます。既婚者は共同申告を行うことが可能で、共同申告を選ぶと夫婦の所得を合算して課税所得とすることが出来ます。一方、日本では原則として個人単位での課税が行われます。配偶者や扶養家族に対する控除が存在しますが、所得そのものを合算することはありません。

2.控除の内容:日本と米国では控除の内容や規模も異なります。例えば、米国では標準控除と項目別控除を選べますが、日本では基本的に各種の控除額が設けられています(例:扶養控除、社会保険料控除など)。また、日本では源泉徴収制度があり、給与所得等の所得から所得税があらかじめ引かれていることが一般的です。この日本の源泉徴収制度に類似した米国の制度が「Withholding Tax」と呼ばれているものです。

3.税率:税率も国によって異なります。米国には連邦所得税と州の所得税の二重の税制があり、連邦税の最高税率は現在37%、州税は州によりますが、一部の州税は最高13.3%です。一方、日本の所得税の最高税率は45%で、さらに住民税が10%加算されます。

米国のWithholding Tax(源泉徴収税)とは?

Withholding Taxは、雇用主が従業員の給与から所得税を自動的に差し引き、それを税務当局に直接納付する制度です。雇用主が従業員の給与から連邦所得税、州所得税、場合によっては地方政府に対する所得税、そして、社会保障税、およびメディケア税を差し引きます。この点も日本の源泉徴収制度と共通していますが、米国では各州ごとの税率の違いが反映されるため、さらに複雑さが増します。

以下に具体的なプロセスを示します:

1.W-4フォームの提出と役割:Withholding Taxの額は、W-4フォーム(Employee’s Withholding Certificate)という書類によって決定されます。このフォームは従業員が自分の税務状況を考慮した上で、源泉徴収すべき税金の額を調整するためのものです。新しく雇用された従業員は、必ず雇用主に対してW-4フォームを提出します。このフォームでは、従業員がその年にどれくらいの税金を支払うべきかを推定するために必要な情報、例えば、自身の身分、所得の種類、配偶者の有無、扶養家族の数などが記入されます。日本では、従業員は源泉徴収額を直接調整することは一般的ではありません。しかし、給与所得控除や扶養控除など、給与から差し引かれる控除の申告によって、結果的に課税所得が変わります。

2.税金の源泉徴収:雇用主は、W-4フォームにもどついて従業員の給与から適切な税金を差し引きます。これらの税金は連邦政府と州政府に直接支払われます。

3.年末の調整と税金の過不足:年末になると雇用主はW-2フォームを従業員に発行します。このフォームにはその年に従業員がどれくらいの給与を得て、いくらの税金が源泉徴収されたかが記録されています。従業員はこの情報を元に税務申告を行います。源泉徴収された税金が所得税負担額を上回っていれば返金が行われ、不足していれば追加で税金を支払う必要があります。ただし、年間の税金が一定額以上に不足していた場合、過少納税罰金(ペナルティ)が適用される可能性があります。この点は日本の年末調整と似ていますが、その詳細な計算方法や罰則は国により異なります。以下は米国の場合のペナルティ対象ケースです:

  1. その年の税金(Withholding Taxと予定納税を合わせた額)が前年の税金の全額、またはその年の税金の90%未満であった場合。
  2. 特定の所得がある高所得者(例えば、連邦税で課税所得が15万ドル以上)の場合、前年度の税金ではなく、その年の税金の110%を最低限納税しなければならない。

従って、所得の変動が大きい人や非給与所得(自営業収入や資産売却など)がある人は、所得予測と予定納税の計画に特に注意が必要です。一方、給与収入のみで生活している人であれば、源泉徴収が適切に行われていれば問題になることは少ないでしょう。

4.W-4フォームの見直し:生活状況の変化(例えば、結婚や離婚、子供の出産など)や所得の増減に伴って、W-4フォームは定期的に見直すべきです。これにより、税金の過不足を防ぎ、適切な税額を確保することが可能です。

まとめ

Withholding Taxの制度は、給与所得者が一度に多額の税金を支払う負担を軽減するためのものであり、また税収の安定化にも寄与しています。そして、Withholding TaxとW-4フォームは重要な役割を果たしています。日本とは異なり、納税者が直接源泉徴収額を調整するシステムであるという点で納税者にとってフレキシビリティのあるシステムといえるでしょう。納税者は、自身の税務状況を理解し、適切に管理することで無事に納税義務を満たし、法的問題を避けることが出来ます。また、生活状況や所得の変化に応じてW-4フォームを見直すことで、適切な税額を確保することが可能です。その過程で生じた疑問や不確かな点については、税務専門家に相談し助けを借りることが、最終的には時間とお金の節約につながり、自身の金融計画を確立する手助けとなるでしょう。

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