アメリカの確定申告(Form 1040タックスリターン)で使うフォームに別紙B (Schedule B, Interest and Ordinary Dividends)があります。利子所得や配当などを申告するフォームなのですが、このたった1ページに「Interest」という単語が9回出てきます。日本で英語教育を受けた人にとって、この1ページはまるで英語試験のひっかけ問題のようです。なぜならば、9つのInterestの意味が全て同じではないからです。今回はマニアックだが大切な、意味をとり間違えると面倒になる、アメリカの確定申告書・別紙B(Schedule B)の「interest」について取り上げます。

1.ネイティブには簡単でも、日本人には難しい

結論から述べると、9つのうち、最初の7つと最後の2つは、別意味として扱ってくださるとよいと思います。

この見分け方は、アメリカで生まれ育ったネイティブの人には歴然とした違いのようです。従って、英語を母国語としない人にとっては要注意ポイントです。実際にネイティブの人に聞いてみると、「あ、それとこれは違う意味だよ」とサッと教えてくれることでしょう。

しかし、自己責任の国アメリカで生きる日本人にとって、「英語が母国語ではないからしっかり理解しておらず、間違った回答をしてしまいました。」という言い訳は受け入れてもらえないという気持ちで、一緒に真剣に向き合いましょう。

今の時代は、グーグル各種の検索機能やグーグル翻訳、DeepLといった精度の高い翻訳機能が揃っています。英文解釈に迷ったら、このようなものをツールとして活用するのもよいと思います。ただ、翻訳機能にも限界がありますので、あくまでも最後のご判断はご自身です。しんどいですが一緒に頑張りましょう。

2.Interestの意味と海外金融資産報告について (7a, box 1)

実際にグーグル翻訳をしてみましょう。

私たちが普段よく使うInterestの意味というと、グーグル翻訳の邦訳は以下になります(※本記事執筆現在の頻度の高い順。検索機能はあくまでも参考とお考えください):

関心、利息、利害、利子、利、権益、利権、得、利回り、面白味、利金、乗り気、感興、痛痒、希望者

実際にはこんなにも意味があるわけですが、確定申告時に私たちがパッと思い浮かべるのは「利息」「利子」ではないでしょうか。

以下は、今回私たちが注目するSchedule Bにでてくる9つの単語です:

※Schedule BはPart I, Part II, Part IIIと3部構成になっており、一部目に以下の1~6まで、そして、三部目に7~9が表示されています。

  1. Interest and Ordinary Dividends
  2. Interest
  3. the total interest
  4. any interest
  5. this interest
  6. Excludable interest
  7. Taxable interest
  8. a financial interest
  9. that financial interest

Part Iから記入を始め、緑ハイライトをみながら、「これは利子所得に関することだな」という頭で記入をしていくと、Part IIIまで来た時に「あれ?」と戸惑う方がいらっしゃると思います。Line 7aのオレンジハイライトの”a financial interest”と”that financial interest”です。

特に、日本の銀行口座に少額の利子があったり、これまでの流れから「$1,500を超える所得があったらPart IIIを記入しなくてはならないのだな」という頭で続けていくと、混乱してしまうポイントだと思います。7aのfinancial interestというのは、私はYesなの?それともNoなの?と。

この場合、”financial”がくっついている単語は”financial interest”として扱ってください。翻訳機能を利用すると、「金銭的な利害関係」「金融上の利益」「金銭上の利害関係」「金銭的利益」などが出てくると思います。つまり、「利子利息」とは異なる意味を持つと考えてよいでしょう。そうすれば、ご自身の7a box 1の回答は出てくると思います。

3.Yesになった場合の海外資産報告FBARについて (7a, box 2)

その結果、7a, box 1の回答がYesとなれば、日本の金融口座等を報告するためのFBAR (FinCEN Form 114, Report of Foreign Bank and Financial Accounts)の提出が必要な場合がある、ということですので、申告しなければならない人、つまり、日本あるいは米国外の銀行口座や保険口座等に合計$10,000保有している場合にはFBARの申告が必要な場合があります。条件の詳細な説明は本記事では割愛しますが、FinCen (Financial Crimes Enforcement Network)のサイトで十分に確認した上で、7aの二つ目のボックスにYesかNoとお答えください。Yesと回答した場合、7bにはそれら口座がある国名を記入して下さい。

今回のSchedule B以外にも、英語がネイティブではない人にとってはひっかけ問題のような英文が載っているフォームがあると思います。どうしても解釈に困ったら専門家にご相談いただくなりしてご対応ください。

 

参考文献

https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f1040sb.pdf

https://translate.google.com/

https://www.deepl.com/translator

https://www.fincen.gov/

記事に関するご質問、記事に取り上げてほしいというトピックがありましたら、Haller基江[email protected]まで。CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ずエンゲージメントレターを交わした上で税務・法務などの専門家に相談をしてください。

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