過去の記事では不正についてお話させていただきましたが、それではどのような手口で不正、そして粉飾決算は行われるのでしょうか?今回は会社の利益を増やすために実際に行われた粉飾決算についてお話させていただきたいと思います。

売上過大計上

損益計算書の中でも非常に重要視されている売上に関する不正です。

  • 返品される商品の売上:期末近くに商品を出荷し売上を計上しますが、顧客と話をして翌期に返品されるとします。返品されることがわかっていても今期の売上を増やしたいために売上計上を行います。
  • リベートや割引未計上:顧客との取引において、年間ある一定の金額を超えた場合リベート(設定基準値達成時の報償)を渡すという取引がよくあります。例えば年間売上が100万ドルを超えていたら10%のリベートを与え、この10%分を翌期に払います。このリベートは売上が設定基準値を超えていることが分かった時点で売上を減らす処理を行う必要があります。そこで今年度、顧客への売上が設定基準値を超えてリベートを払わないといけないことがわかっていたとしても、今期に売上を減らす処理をせず、今期の売上を過大計上するため、リベートを翌期に計上します。
  • 工事進行基準:何か月や何年もかかる大きな工事の場合(マンションの建設等)、売上は工事の完了を待たず、進捗度合いに応じて計上します。通常、進捗状況の計算をするに際し、あらかじめ完成時の売上金額と費用を見積り、実際に発生した費用を基に売上を計上します。例えば、とある工事が100万ドルの売上、原価が80万ドルであったとします。工事を開始し、発生した費用が40万ドルであったとすると50%の工事が終わっていることになりますので(40万ドル/80万ドル)、売上はもともとの予想売上100万ドルの50%である50万ドルになります。過去にあった不正はこの見積り費用をわざと低くするものでした。例えば予想原価を60万ドルにした場合、発生した費用が40万ドルであれば全体の3分の2が完成したこととなり、予想売上100万ドルの3分の2である67万ドルが売上として計上されることとなり、売上が17万ドル過大に計上されます。ただ、予想原価が低すぎると、いずれは実際に発生する費用が予想より高くなりますので利益が減少、あるいは損失が発生することになりますが、これは損失を先延ばしにし、今期の売上を増やすことを目的に行われていました。この不正は現場や経理担当者が経営陣から売上を増やすように強くプレッシャーをかけられており、その要望に応えるために行われた不正で、大きな事件となりました。

経費過少計上

通常、発生主義では費用は支払った際ではなく発生した際に計上します。例えば弁護士費用が発生し、請求書を受け取ったもののまだ支払が完了していない場合、弁護士費用と買掛金が計上されます。しかし、決算期の利益を増やすため、決算月で発生した弁護士費用はその月に計上せず、翌月支払った際に弁護士費用と現金で記帳します。費用を翌期に先送りすることにより、今期の利益を増やすことができます。

その他

他の不正としましては、経費として計上すべきソフトウェアのメンテナンス料や修繕費を固定資産に計上する、回収不能の売上債権となっても貸倒引当金を計上しない、市場性のなくなった陳腐化した製品の評価減を行わない、実在しない在庫を計上するために原価を減らす、等があります。

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