2023年も終わり、12月決算の会社は年度締め作業が終わった、また締めの最中と真っ最中いうこともあるかと思います。また、12月決算以外の会社の会社も決算時期が近づいているかもしれません。今回は年度末締め作業に際して注意しなければならない事項についてお話させていただきます。

年度末締め作業における注意点

年度末締めは月次決算より作業が増え、注意しなければならない事項も増えます。では、年度末決算ではどのような点に注意を向けるべきでしょうか?下記が主な注意点となります。

  1. 売上と仕入のカットオフ(期間帰属):売上と仕入が正しい期間に記帳されているか?

期中では売上は請求書発行日に計上、また商品は入庫した日に計上されているかもしれません。しかし、もし請求書を商品を出荷した次の日に発行している場合、年度末月の最終日に商品を出荷し、請求書を次の営業日である翌月に発行、売上を計上したとすると、本来年度末までに計上すべき売上が翌月に計上されることになり、売上が正しい期間に計上されないことになります。また、仕入れに関しても、入荷時点ではなく、商品が仕入先から出荷された時点で商品の所有権とリスクが会社に移るのであれば、期末時点で未着品が発生する可能性があります。

 

期末のカットオフは監査においても非常に重要視されておりますので、年度末は売上と仕入が正しい期間に記帳されているかのチェックを行い、必要であれば決算調整として調整を入れることが必要です。

 

  1. 棚卸調整:在庫を持っている会社は期末日、および期末近くに棚卸を行います。棚卸の際、帳簿上の在庫の個数と差があった場合は分析し、その後帳簿上の在庫の個数はその棚卸の結果と同じになるよう調整を行う必要があります。

 

  1. 売掛金の貸倒引当金:期中では貸倒引当金を考慮していなくても期末では各顧客の回収状況、また、顧客先の財務状況も鑑みて回収可能性を検討し、必要があれば貸倒引当金を計上する必要があります。また、2023年度から新たに現在予想信用損失(Current Expected Credit Losses)のルールも適用する必要があります。現在予想信用損失の詳しいルールに関しては下記の記事をご覧ください。

https://www.cdhcpa.com/ja/currentexpectedcreditlosses/

 

  1. 滞留在庫引当金:動きが鈍く滞留している在庫、また陳腐化した在庫があれば引当金を計上する必要があります。なお、期中で各商品の売れ行きや処分するべき在庫がないかを定期的に確認しておくことで年度末締め作業の短縮が可能になりますので、毎月滞留在庫の状況をチェックすることをお勧めいたします。また、年度末の棚卸を行った際に陳腐化したり、販売することができないと考えられる商品はないかを確認し、販売することができない商品また処分する予定の商品は引当金を計上する必要があります。

 

  1. 低価法分析:年度末にある在庫のうち、販売した際に損失が発生すると考えられる商品は時価まで在庫を下げる処理を行う必要があります。例えば、単価が$100の商品が10個あったとします。この商品を販売するのに売値が$80となると考えられる場合、在庫の単価を$20減らし、合計$2,000の評価損を原価に計上する必要があります。この分析を行うためにも期中から商品別利益率をチェックし、損失が発生していないかを確認することが重要です。商品別利益率をチェックすることで商品販売時に損失が発生している場合は期中で売値の調整を行うことも可能になり、年度末に評価損を減らすことも可能です。

 

  1. 有給休暇引当金:アメリカの会計基準では、従業員が使っていない有給休暇は引当金として未払計上する必要があります。年度末で各従業員が何日の有給休暇が残っているかを把握し、残存日数に日給を掛けて有給休暇引当金の計算を行い、計上します。

 

  1. 賞与引当金:賞与引当金とは従業員に対して、翌期以降にボーナスを支給する場合に計上される引当金です。年度末時点で翌年、従業員にどれだけのボーナスを支給するかを計算し、引当金として計上します。

 

  1. 未払費用:請求書が年度末締め時点で届いていないが決算期末までに発生した費用は未払費用として計上する必要があります。例えば、年度末が3月で、3月に弁護士に相談をしていたが、年度締めの時点でまだ請求書が届いていない場合、3月に発生している費用を見積もって未払費用として計上する必要があります。また、輸送費の請求書が届くのが遅いため、未払費用を計上しなかった、ということがよく見られます。在庫を持っている会社の場合、金額の大きい輸送費が発生していることが良くありますので、年度締めまでに輸送費の請求書が届いておらず、かつ輸送費を見積もることが難しい場合は物流業者にお問い合わせし、請求されるであろう見積りの金額だけでも聞いて未払費用に計上することをお勧めいたします。

 

なお、未払い費用は見積りですので実際の請求書金額とは異なる場合があります。会計上、実際ではなく、見積りを記帳することは認められており、見積りと実際に差異があることはよくあります。ただ見積りと実際の差異が大きすぎると会社が行った見積りが間違えていた、と考えられるため注意が必要です。年度末では得られる情報を元にベストな見積りを行うことが重要です。

 

弊事務所では年度締め、月次及び四半期締め作業のサポートをさせていただいております。こちらのサービスについてご質問等ございましたらCDH会計事務所の中尾 [email protected] までお気兼ねなくお問い合わせください。