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「ここ10年、「国籍離脱者」、「国籍喪失者」が増える傾向にあることを示す統計がある。」という副題の「サンデー毎日」の記事作成のために、筆者は、ジャーナリストの鈴木隆祐(すずき・りゅうすけ)氏に取材を受けました。その記事では、日本国籍の離脱者・国籍喪失者の総数は、増加傾向であることが最初に説明されています。私は、自身の離脱理由と米国の遺産税について言及させてもらいました。今回は、特に米国遺産税について、詳しく解説してみたいと思います。

  • 米国市民権を取得する日本人の数(サンデー毎日の記事から)

海外在留邦人数調査統計では、昨年2021年で訳134万人。そのうち最も多いのが米国の約43万人だそうです。米国土安全保障庁(USCISー筆者加える)によると2020年度中に米国市民になった日本生まれの人は1584人。日本の法務省によると同じ年に日本国籍を離脱・喪失した人は1596人。ほぼ同数ですね。この10年くらいの平均値は1765人であり、継続的に1000人を優に上回る数を記録しています。

  • 米国遺産税と米国市民権

米国の市民権を持つと、遺産税の考え方では世界のどこにいても常に米国にDomicile(居住)になり、その特典としてUnified Credit(生涯非課税枠)を享受できます。この生涯非課税枠は、贈与税と遺産税が一体となった非課税枠であり、少なくとも今年までは毎年増加してきました。2022年の枠は、$12,060,000であり、夫婦であればこの二倍を子供や他人に生涯で贈与・相続しても連邦遺産税は発生しません。この金額は、日本の相続税の控除額と比較すると40倍近い数字であり、実際は、殆どの人は米国の贈与税・遺産税を支払うことはありません。

ただし、この非課税枠を理解するには、注意点がいくつかあります。次のポイントを理解してみてください。

  • 米国居住者と生涯非課税枠

この非課税枠は、米国に居住している限り、米国市民でなくても享受できます。税務上で、居住者(Resident)であれば問題ありません。つまり違いは、米国を離れた場合に、米国市民以外は、居住者ではないと判断されるリスクがあるが、米国市民であれば、そのリスクがないのです。つまりどこに住んでいても、この枠を利用することができます。

  • 州の資産税がある

お住まいの州によっては州の遺産税があります。州の遺産税がある州は、コネチカット、コロンビア特別区、ハワイ、イリノイ、メイン、マサチューセッツ、メリーランド、ミネソタ、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、バーモント、ワシントン州などです。気を付けましょう。もうひとつ忘れてはいけない点は、連邦税と同様に、一人いくらで控除額が決まっており、連邦の生涯非課税枠よりだいたい低い金額です。連邦税を払わなくても、州の遺産税を支払うケースもあります。

  • 日本の贈与税・相続税がかかる

もうひとつ忘れてはいけないのは、米国でいくら生涯非課税枠があっても、日本に資産があれば、日本の資産の移動に、あるいは過去の日本の居住が一定の条件を満たしていれば、全世界の資産の贈与・相続による移動に、日本の贈与税・相続税が掛かってくることです。米国の遺産税を逃れることができても、日本の同種の税金を避けることができない事態が生じます。ここはクロスボーダー生活者にとり頭が痛い点です。

  • 米国の遺産税の生涯非課税枠を利用するには

必ずしも市民権を取得する必要はなく、米国の居住者でおり、受贈者、被相続人(つまりもらう人)も米国居住者であれば、問題なく非課税枠を利用できます。市民権というのは、常にアメリカに住む権利であり、いつでもアメリカに戻る権利の側面が一番強いと思えます。ですから、市民権を取ることで遺産税を避けようとするのは、少し目的と手段がマッチしない気がします。米国の贈与・遺産税を避けるには、贈与・遺産税がない州を選び、米国の居住者であり続け、受取る側も米国の居住者でいれば良いだけだからです。少なくとも現時点ではそのような制度になっています。

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