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米国税務申告には、標準控除(Standard Deduction)という制度があり、一定の金額を毎年の所得から控除してくれます。自身の所得がこの標準控除の金額に届かない方は、米国の連邦政府に税金を支払いする義務がありません。往々にして、州の税務申告書は連邦の課税所得を引き継ぎ、州独自の税率で課税する制度が多いので、州に関しても同じことが言えます。

海外にお住まいの方は、海外所得控除(Foreign Earned Income Exclusion)という制度や、外国税額控除(Foreign Tax Credit)の制度があり、米国政府への支払いが発生しない場合もあります。

  • 税務申告しないで良いのか?

しかし税金がないからと言って、米国の税務申告書をファイルしないのは、良い考えではありません。一番の理由は、米国政府は、国際取引に関するリポーティングへの罰金を非常に高くしているからです。海外金融口座、海外からの贈与、相続、外国信託の取引き、海外企業の所有など、数えきれないくらいの情報申告の制度があり、全てに非常に高額なペナルティが課せられています。毎年税務状況がまったく変わらない人、例えばソーシャルセキュリティのみの受益者などは、あまり心配はないかもしれませんが、それ以外の大多数の人は、やはり毎年たとえ税額がゼロでも申告をすべきです。

  • 申告によるベネフィット

もしあなたが米国源泉所得があり、源泉されていたら、申告をすることで米国の源泉税を取り戻すことができるかもしれません。例えば米国ソースの配当金などは10%の源泉税が必ず取られているはずです。また、コロナのときに支給された米国の給付金の支給の方法のなかには、税金の還付がありました。税務申告をしていた人は、還付金を貰えたわけです。コロナに限らず連邦政府が出してくれる他のベネフィットを受けることができるわけです。また税務申告を提出することで通常3年間の時効をスタートさせることもできます。海外金融口座の報告などでは、残高がわからなくてもUnknownとして報告もできます。端的に言えば、報告をしておくことが大事だということです。忠実に税務義務を全うしようとした態度が重要です。

  • 未申告によるデメリット

全世界の所得を米国政府に報告するのは、米国市民の義務です。未報告に対しては、ペナルティと利子が課せられます。そして、税務申告をファイルしていない限り、時効はスタートしません。前述の海外金融口座などの情報も報告義務があります。さらに、米国籍の者はどこにいても米国の居住者ですので、海外で発生した贈与、相続に対しての贈与税や、遺産税の申告義務もあります。実は日米の租税条約には、セービング条項(Saving Clause)があります。第一条4項に記載されています。この条項でたとえ日本に居住している場合でも、日米租税条約が定める課税の減免は認めないと明記してあります。米国が結ぶ租税条約にはこのSaving Clauseは数多く付帯しているものです。これらの理由で、私はSocial Securityだけに頼り生活する海外の米国籍退職者以外は未申告によるデメリットのほうが、大きいと考えています。

  • 最後に

後になって、巨額なペナルティや利子、税金を支払わないためにも、毎年のファイリングは行うようにしたいものです。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。また、お読みになる時点ではすでにルールが変更されているリスクもあります。最新のルールは、下記のWebsiteよりお問合せください。また実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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